『部落差別解消推進法のトリセツ』を発行しました

『部落差別解消推進法のトリセツ 部落問題解決の到達点はゆるぎない』

『部落差別解消推進法のトリセツ』 部落差別解消推進法を口実にした動きが続いています。しかしこの法律は、決して逆流の根拠とはなりません。国会審議やそれを凝縮した形での附帯決議、その後の法務省や大阪府・大阪市など行政の動きなどもふまえて、この法律をどう読み取ればいいかを明らかにしたブックレットを作成しました。

(書店では扱っていません。直接、大阪教育文化センターに注文してください。)

頒価500円  2023.1.23.発行  A5版/本文84ページ

■大阪教育文化センター TEL  06-6768-5773 FAX  06-6768-2527

内容

※「トリセツ」とは取扱説明書のこと

はじめに

1.部落差別解消推進法成立への経緯

(1) 法律の根源的な矛盾 「こんな法律は早くなくなるのが望ましい」

(2) 法制定の背景

(3) 国会における審議の主な流れ

(4) 主な質疑

(5) 運動団体の行き過ぎた言動批判 地対協意見具申が国会決議に

(6) 孤立した「部落解放同盟」

ア.自民・民進・共産党議員が暴力糾弾を批判

イ.自・民・共議員が「解同」を批判 反省のない「解同」

ウ.「解同」のごまかしと策動 条例を要求していても「考えはない」と

エ.差別糾弾闘争は部落解放運動の生命線

オ.結婚問題 自由な意見交換こそ 法律で何ができるか答えられず

カ. インターネット この法律でも削除できない 言論には言論で

2.条文の検討

(1)法1条2条

ア.「部落差別」を定義できなかった法律

イ.自民党内部で定義がまとまらず削除されたという

ウ.定義を置かずとも明快と支離滅裂の答弁

エ.「部落の出身」を持ち出すことの矛盾

オ.法務官僚の知恵 「部落差別」とは「同和問題」

カ.条文にない定義を「調査研究報告書」が「理解」

キ.採用しなかった「部落の出身であることを理由にした差別」

(2)「禁止」ではなく「部落差別は許されないもの」と規定

(3) 法第3条

ア.この条項を口実に拡大解釈をねらう「解同」

イ.大阪府は「解同」の要求を受け入れない

ウ.法にいう施策は3点のみ

エ.財政出動はない

オ.自治体から財政要望

(4) 法4条

ア.大阪府の相談事例

ウ.人権総合相談事業交付金の行方に疑問 大阪府の場合

(5) 法5条

ア.人権教育・啓発推進法に定めるものと異なる手法を想定していない

イ.教育はワクチンではない

ウ.教育により新たな差別を生むことはあってはならない

エ.6条調査が示すもの 頻度と内容の検討を

オ.意識調査が示す逆効果

(6) 法6条

ア.どんな調査をするのか発議者にイメージはなかった

イ.荒唐無稽な「解同」の要求 大阪府は拒否

ウ.範を示した大阪府人権局『旧同和対策事業対象地域の課題について』

エ.人や地域を特定しない

オ.「部落差別の実態」に係る調査、実態調査ではない

カ.学校教育現場における実態調査は行わない

キ.法制定時に予定されていなかった新法を検討する調査ではない 69

ク.「解同」 大阪府を法務省を「新たな寝た子を起こすな論」として攻撃

3.附帯決議は部落差別解消の姿勢を問う試金石

歴史の到達点はゆるぎない

(1) 附帯決議の意味

(2) 「解同」は附帯決議をどうとらえているか

ア、『解放新聞大阪版』のコラム「水平線」は附帯決議にかみつく

イ.「解同」やその系列の刊行物では附帯決議無視

ウ.逆流の手口 無視と字面でごまかす

エ.「解同」、自民党の軍門に降る

(3) 附帯決議に対する態度は、部落差別解消の姿勢を問う試金石

(4) 歴史の歩み、解決の到達点はゆるぎない

ア.地域の変化

イ.行政の対応の変化

資料 HP「人権教育事典」

部落差別の解消の推進に関する法律・衆参議院附帯決議

『続・学びなおしの部落問題』を発行しました

『続・学びなおしの部落問題』-「部落問題学習」の押しつけで新しい差別を生むことのないように-

『学びなおしの部落問題』刊行から3年。その後、法務省の「依命通知」や「部落続・学びなおしの部落問題差別の実態に係る調査結果報告書」(いわゆる6条調査報告書)などがだされましたが、同書で提起したことを裏付けるものとなっています。新学習指導要領にもとづく中学校、高校の新教科書の検定、採択など、前著刊行後の動きをもりこみました。

(『続・学びなおしの部落問題』は書店では扱っていません。直接、大阪教育文化センターに注文してください。)

頒価500円  2022.3.3.発行  A5版/並製/92ページ

内容

1 教育で新しい差別を生むことのないように

2 中学校社会科「歴史」「公民」教科書(2021年度から使用)の検討

3 高校「歴史総合」教科書(2022年度から使用)の検討

4 高校「公共」教科書(2022年度から使用)の検討

5 資料

(1) NHK大阪放送局の度重なる偏向報道―『バリバラ』にふれて(民権連)

(2) 民権連通信号外2021年6月府教育庁交渉

(3) 大阪府人権局「旧同和対策事業対象地域の課題について」(抜粋概要)

(4) 法務省「インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立
件及び処理について(依命通知)」2018年12月27日(抜粋)

(5) 法務省「部落差別の実態に係る調査結果報告書」2020年6月(6条調
査報告書)(抜粋)

(6) 部落差別の解消の推進に関する法律および附帯決議

 

 

『学びなおしの部落問題』

『学びなおしの部落問題』
 教育により新たな差別を生むことのないように』
    を出版しました

お申し込みは大阪教育文化センターへ mailは kyoubun(アットマーク)minos.ocn.ne.jp
ほぼ、即日発送します。時間外のメールは翌日発送。振込用紙を同封します。

○書店での購入は、取り寄せになります。おいてくれる書店はまだ少ないです。
出版元の部落問題研究所でも購入できます 
○ネット書店も「お取り寄せ」 アマゾン・楽天は送料無料、セブンはセブンイレブンの店頭受け取りで無料、HMVはローソンの店頭受け取りで送料無料です。 ネット書店の取扱い一覧はこちら

著者:大阪教育文化センター「部落問題解決と教育」研究会
出版社:部落問題研究所
単行本:A5版 127ページ
定価:1100円(1000円+税)
ISBN-10:4829845244
ISBN-13:978-4829845240
発売日:2018/11/8(奥付の印刷発行は10/20となっていますが)

目 次

1.部落問題とは何か                5
2.部落問題は今どうなっているか          8
3.部落問題の解決とは何か             19
4.部落の歴史 起源を考える            26
5.「部落差別の解消の推進に関する法律」と
  「付帯決議」を活かして最終的解決へ       37
 「部落差別の解消の推進に関する法律」「付帯決議」  39
6.学校教育で大切にしたいこと           55
7.社会科で身分制度はこう扱おう          65
8.教育で「新たな差別を生む」ことはあってはならない  68
9.社会科教科書の改善を              82
10.様々な問題
 (1) インターネット                107
 (2) 結婚差別                   109
 (3)「土地差別」                 111
 (4) 意識調査                   112
11.資料 これまでの判例              113
   矢田事件/吹田二中事件/八鹿高校事件
12.行政資料                    118
「部落差別解消推進法」を受けて学校教育での対応ガイドライン   125
Web人権教育事典 紹介               126

コラム

・部落差別と性差別、民族差別は解決の仕方が違う   25
・部落問題は封建制度の残り物(残滓)         35
・誰が「同和地区の人」か誰も答えられない      36
・部落解放同盟・自由同和会・全国人権連       53
・「部落」「同和地区」ってどこ?          73
・同和教育への国民の批判              80
・全国人権教育研究協議会(全人教)         81
・江戸時代の身分別人口の割合            96
・教科書で学んだことが意識調査に          97

行政の見解など

○現在では、同和対策事業の対象としての地域および住民は存在しません-大阪府府民文化部    7
○対象地域で見られる課題は、必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできない-大阪府府民文化部    8
○生まれた時から住んでいる人は大阪府8.6% 大阪市7.3%      12
○かつての地域をとりあげてという調査はできない-大阪府教育庁   16
○差別意識は行政、運動体の双方、特別扱いの結果-關大阪市長    23
○(「ムラ」という表現)今後とも、使用しない-大阪府教育庁    69
○「今、被差別部落なんてないよ」という-大阪府教育庁       71
○(「同和」)固有名詞を除き基本的に使用しない-寝屋川市     72
○「同和地区」の存在を前提とした現行の条例、基本方針、推進計画、推進プランはありません-大阪市市民局                    72
○(「立場宣言」)特定の立場に立つ政治運動・社会活動とを明確に区別することは当然-大阪市教育委                        75
○学習経験を積むほど悲観的な意識が広がった-大阪府府民文化部   76

「部落差別解消推進法」を受けて 学校教育での対応ガイドライン

「部落差別解消推進法」を受けて 学校教育での対応ガイドライン

このガイドラインのダウンロードはこちら(PDF A4サイズ1枚)

Ⅰ 「法及び附帯決議」の正確な理解をすすめましょう

1.国会論議で明らかになった法律の内容

・部落差別を定義した条文がありません。

・施策は、相談、教育啓発、実態調査の3つのみ。

・特別対策事業で生じた問題は繰り返しません。

・地域や対象者を特定することはありません。

・運用や配慮事項について示した「附帯決議」があります。

・地域の実情に応じて取り組むとされています。

2.「附帯決議」は判例や過去の審議会文書を踏まえています

 「過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、部落差別の解消を阻害していた要因」「当該教育及び啓発により新たな差別を生むことがないように留意」「その内容、手法等に配慮」など、附帯決議の指摘はこれまでの判例や特別対策当時の審議会意見具申、政府文書にもとづいています。「法」の国会審議では具体的に説明されています。

3.「法」と「附帯決議」は一体のもの

 文科省は「法及び附帯決議」の周知を通知しています。附帯決議を省略すれば法の趣旨を正しく理解することにはなりません。

4.附帯決議の内容について教職員の共通理解を

 「法」をめぐる国会審議においてどんな議論がなされ、附帯決議がまとめられたのか、説明を求めましょう。

 国会論議で示された公式の法解釈や附帯決議についてきちんと共通理解しましょう。

 学校という公共の組織では、私的な理解ではなく公式の解釈で議論することが求められます。

Ⅱ 「対象地域」「同和地区」「被差別部落」は存在しません

 法的に存在しません。実態としてもありません。なくすために人々も行政も努力しました。

「地区住民」「地区出身者」「部落民」などはいません。

 同じ日本人です。この問題の根幹に関わる問題です。同じ日本人を区別することはあってはなりません。

 特別対策の終了後、いっそう市民の交流がすすみました。その詳しいデータは 大阪府府民文化部人権局『旧同和対策事業対象地域の課題について』(H28.1.22)に示されています。

Ⅲ 学校教育で配慮するべき事項

1.「同和地区」「部落」などの言葉を使用しないようにしましょう。
  教科書にある場合は昔の話と教えましょう。

2.賤称語は教えません。

3.「地区」「当事者」「出身者」「社会的立場」などと分離する指導はしてはなりません。

4.歴史学習で賤民身分だけを扱うことはやめましょう。

5.「差別が今もある」「結婚で差別される」と悲惨さを強調する実践はやめましょう。

6.子どもの発言は事件とせず指導の課題ととらえましょう。成長過程の子どもの未熟な言動は、大人の言動と同じ扱いはしません。

7.この問題にかかわるフィールドワークはしません。

8.特定の運動団体からは、講師を呼びません。

Ⅳ 求められる指導

1.誰もが大事な、かけがえのない人間であることを理解させる。

2.生まれたところや住んでいるところは人間の値打ちとは関係ないことを理解させる。

3.友だちとの交流、「みんないっしょやなあ」と共感・連帯を体験させる。

4.情報について自分で調べて本当のことを知る力、個人情報を守る力を身につけさせる。

詳しくは「人権教育事典」を検索してください。
判例や審議会答申、政府文書も紹介しています。

大阪教育文化センター  「部落問題解決と教育」研究会

大阪市天王寺区東高津町7-11 大阪府教育会館403号室 TEL  06-6768-5773

 https://jinken-kyoiku.org/

2017.5.

第43回大阪はぐるま研究集会

第43回大阪はぐるま研究集会 ご案内

主催大阪はぐるま研究会

子どもの心を育む教室と授業づくりをめざして

 この案内のダウンロードはこちら(PDF B5版で4ページ)

1.期日 2017年8月5日(土)・6日(日)

2.会場  エル・おおさか(大阪府立労働センター)Tel 06-6942-0001

        京阪「天満橋」・地下鉄谷町線「天満橋」西へ300m

3.日程
全体会 (第一日午前9:30~12:00 第二日午後1:10~4:40)

 第一日

☆詩の朗読 豊能授業と教材研究会・箕面はぐるま研

1.主催者あいさつ

2.基調提案

      「子どもの認識力を育て、深める授業の創造を!」

大阪はぐるま研究会 事務局長 辻まち子

3.特別報告1 「改訂学習指導要領の重大な問題点と私たちの課題」

大阪教育文化センター 事務局長 山口隆さん

特別報告2 「部落問題解決の到達点と今日的課題」

民主主義と人権を守る府民連合 委員長 谷口正暁さん

第二日

 ☆詩の朗読 豊能授業と教材研究会・箕面はぐるま研 

1.地域サークルからの報告泉南はぐるま研究会

2.模擬授業    「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ作)(光村図書3年)

授業者泉南はぐるま研究会佐藤秀一

3.記念講演「物語の力」
 朝日新聞 「声」編集次長 佐々波幸子(さざなみ ゆきこ) さん

分科会   [ ]は担当サークル・担当者
8月5日(土) 午後1:10~4:40  8月6日(日) 午前9:30~12:00

物語文

【りすのわすれもの】(松谷みよ子作)(教育出版1年下)

 りすがわすれものをしたおかげで、後々のりすが命をつないでいけるという心あたたまるお話です。りすのさんたのかわいさと成長に共感しながら参加された皆さんと読み深めていきたいと思います。

[和泉どの子も伸びるサークルたんぽぽ]

【かさごじぞう】(岩崎京子作)(東京書籍教育出版・学校図書・三省堂各2年)

 ふぶきの中、出会った地蔵さまに「おお、きのどくにな。さぞつめたかろうのう」と、自分のてぬぐいまでかぶせるじさまの想像力。極限の貧しさの中でも、お互いを思いやり、あかるく心豊かにお正月を迎えようとするじさまとばさまの言葉と行動に寄り添ってじっくりと読み味わいたいです。

[和泉どの子も伸びるサ一クルたんぽぽ〕

【ちいちゃんのかげおくり】(あまんきみこ作)(光村図書3年)
ちいちゃんから大切なものを奪い続けてきた戦争。それは、ちいちゃんの未来までも奪ったのです。ちいちゃんが孤独と空腹にたえながら、家族に会いたい、家族と一緒にいたいという願いを持ち続げた姿を読んでいきます。

[泉南はぐるま研究会]

【世界一美しいぼくの村】(小林豊作)(東京書籍4年)

 今まだ紛争の絶えないアフガニスタンを舞台にしたお話をどのように読み合っていくのがよいのか、また続編を続けて読み、物語を深く味わうための指導案も考えることができればと思います。

[箕面はぐるま研究会]

【大造じいさんとガン】(椋嶋+作〉(光村図書・東京書籍・教育出版・学校図書.三省堂各5年)

 羽曳野はぐるま研では毎回一つの教材をじっくり読み込んで、自由に意児を言い合っています。「大造じいさんとガン」は、残雪との戦いを通して、大造じいさんの残雪に対する見方が変化していく様子を描いています。ぜひ当日も普段の羽曳野はぐるま研のように自由な雰囲気で教材を読めたらいいなと思います。

[羽曳野はぐるま研究会]

【海の命】(立松和平作)(光村図書・東京書籍6年〈東京書籍=海のいのち〉)

 父を失った太一が、与吉じいさにも助けられながら、村一番の漁師へと成長し、幸せな家庭も築くという太一の成長の姿と海に生きる漁師の海に対する思いを読み合います。

[泉南はぐるま研究会]

説明文

8月5日(土)午後1:10~4:408月6日(日)午前9:30~12:00

【ウナギのなぞを追って】(塚本勝巳文)(光村図書4年)

 説明文の学習を確かに、楽しく進めるためには、教材の特質をとらえることが必要です、なぞに包まれていたウナギの生態を明らかにするため、マリアナの海で調査をして卵を産む場所を探していく様子は科学的な読み物としてもおもしろいです。みなさんと一緒に教材研究を深め、二日目は授業の進め方を考えていきましょう。

[箕面はぐるま研究会]

人権と社会科

 そもそも「部落問題」とは、「部落問題の解決」とは、どういうことなのでしょうか?また、部落問題の教科書の記述に問題はないのでしょうか?さらに昨年国会で通過した「部落差別解消法」をどう考えればいいのでしょうか?社会科は、ともに4年生の実践です。瀬川実践は地域の開発を取り上げた報告、志村実践は少人数を生かした総合的な報告です。

 ▼8月5日(土)午後1:10~4:40

 ・「教科書の中の部落問題」[柏木功]

 ・「琵琶湖疎水」[瀬川靖央](京都)

 ▼ 8月6日(日)午前9:30~12:00

 ・「部落差別解消法」と学校教育[柏木功]
 ・「思い出いっぱい1/2成人式」-小さな学校のすてきな4人-[志村誠]

学級づくり

 8月5日(土)午後1:10~4:408月6日(日)午前9:30~12:00

 作文や文学で、子どもいきいき学級作り、具体的な作文の授業も交えて、青年教師が報告します。今日大きな問題になっている「いじめ問題」や保護者との連携、子どもが主人公の集団づくり、そして先生が元気になれる秘訣を語ります。

[細野翔太][土佐いく子]

--佐々波幸子さんご紹介--

 1991年朝日新聞社に入社。子育て、介護、子どもの本などをテーマに取材を重ね、生活面、be、文化庁、読書面担当を経て、4月から読者の投稿を扱う「声」編集次長。子どもの本にまつわる記事を1冊にまとめた『生きてごらん、大丈夫』を昨年出版。

〈佐々波さんからのメッセージ〉

 すぐれた子どもの本は「大きくなるって楽しいことだよ。生きてごらん、大丈夫」と背中を押してくれるもの-『ゲド戦記』を翻訳した清水員砂子さんの言葉です。

  みなさんにも、子どもの頃に読んでもらった絵本や自分で繰り返し読んだ本の中に、支えとなった一冊があるのではないでしょうか。私自身は、友だちと探偵団をつくるきっかけとなった『カッレくんの冒険』が思い浮かびます。引っ込み思案だった私に、前に出て行く力を与えてくれた一冊ともいえそうです。東日本大震災から1カ月後、岩手県大船渡市の保育所で、『はらぺこあおむし』に夢中になる子どもたちに出会いました。本の力を目の当たりにした体験でした。当日は、そうした物語の力や、取材で出会った作家の方々のことばをお伝えできたらと思います。みなさんの「わたしの一冊」を、お持ちいただげたらうれしいです。

参加申し込みについて

1.参加費 3000円(学生及び一日参加は2000円)(当日受付でお納めください。)

2.申し込み ハガキ・Fax・E-mailで「予約申し込み」をしてください。予約受付と同時に折り返し自宅住所に「参加票」をお送りします。会場は定員が決められているので、当日参加の場合、ご希望の分科会に入っていただけないことがあります。資料を確保するためにも、ぜひとも予約申し込みにご協力ください。定員は各分科会とも18名です。

 申し込みの際は、①氏名②郵便番号、自宅住所、電話番号③勤務先④参加希望分科会(第1希望、第2希望)をご記入ください。

3.締め切り 7月29日(土)

4.申込先 〒590-0423 泉南郡熊取町自由が丘2-15-13 辻まち子

E-mail machik0-tSuji@ares.eonet.ne.jp

Tel&Fax 072-453-5214

◇集会ミニ紹介

☆地域サ-クルからの報告

 大阪はぐるま研究会の地域サークルの一つ、「泉南はぐるま研究会」。月に1回、研究会を開き、クラスのこと、子どものこと、学校のこともよく話し合っています。

☆模擬授業

 第10回研究集会から続げている模擬授業です。全体集会参加者が、児童・生徒役になって、授業形式で教材を読み合います。今回は、『ちいちゃんのかげおくり』(光村図書3年あまんきみこ作)を取り上げます。

☆分科会

 参加者全員で話し合い、考え合い、学び合い、その教材について読みを深めていく集団研究の場です。担当サークル・担当者が話題・問題提供いたします。1日目は3時間半、2日目は2時間半と、時間設定に差があります。2日目だけの分科会は時間が少ないですが、ご了承ください。

特別報告1  昨年に続いて、山口隆さんに話していただきます。山口さんは現在、大阪教育文化センターの事務局長としてたいへん活躍されています。

特別報告2 谷口正暁さんは大阪府同和問題解決推進審議会委員であり、大阪市同和問題に関する有識者会議委員でもあります。同和問題の現状と課題について話していただきます。

日本国憲法 第二章 戦争の放棄

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

「教え子を戦場に送らない」この思いつよくつよく、わたしたちは平和憲法を守ります。

大阪はぐるま研究会

「部落差別の解消の推進に関する法律案」制定に反対する決議 部落問題研究所

「部落差別の解消の推進に関する法律案」制定に反対する決議

この決議のダウンロードはこちら(PDFファイル)

 自民党が中心となって、「部落差別の解消の推進に関する法律案」(以下、「部落差別解消推進法案」)を制定しようとしている。同法案は、「部落差別」の定義もしないままに、「部落差別の実態に係る調査」を行い(第6条)、国・地方公共団体をして「部落差別の解消に関する」施策を講ずることを「責務Jとする(第3条)とし、さらに、国・地方公共団体に部落差別に関する相談体制の充実(第4条)、部落差別解消のために教育・啓発を行なうことを求める(第5条)としている。

 周知のように部落問題対策(同和対策)は、1969年同和対策事業特別措置法制定以来2002年3月まで30年以上にわたり、様々な取組みが実施されてきた。要した経費は国・地方あわせて約16兆円という。この結果、所管省である総務省地域改善対策室は、「特別対策を終了し一般対策に移行する主な理由」として、①これまでの膨大な事業の実施によって同和地区を取り巻く状況は大きく変化、②特別対策をなお続けていくことは、差別解消に必ずしも有効ではない。③人口移動が激しい状況の中で、同和地区・同和関係者に対象を限定した施策を続けることは実務上困難、をあげた(平成13・2001年1月26日「今後の同和行政について」)。

 また、「同和関係特別対策の終了に伴う総務大臣談話」(平成14・2002年3月29日)においても、「園、地方公共団体の長年の取組により、劣悪な生活環境が差別を再生産するような状況は今や大きく改善され、また、差別意識解消に向けた教育や啓発も様々な創意工夫の下に推進されてまいりました」と状況の激変を確認している。部落問題研究所は、創立60周年記念事業として「部落問題解決過程の研究」に取組んできたが、その中で戦後高度経済成長の過程を通して部落問題解決は大きく前進し、それは不可逆な歩みであることを確認してきた。 これらをふまえてみても、総務省の指摘は首肯できるところである。

 このような客観的な事実があるにもかかわらず、自民党などは、新たに「部落差別解消推進法」を制定し、「部落差別の実態」調査を行なうという。そもそも今から20年余り前の全国調査(総務庁「平成5年度同和地区実態把握等調査」)によってみても同和地区住民のうち58.7%が同和関係以外人口、つまり「部落」以外の住民なのである。このような状態で「部落差別の実態」の調査が果たして可能であろうか。新たに法律により「部落差別の実態」調査を実施するということは、「部落」と「部落」外との壁がほとんどなくなった状態になっているのに、新たに壁を築くことであり、2002年3月に「特別法」失効とともに消滅した「同和地区」(部落)を法制上復活させるということであって、しかも同法案が時限法でないことからすれば、半永久的にそれを存続させるという企てに他ならない。

 以上述べたように、部落問題解決過程の到達点に照らしてみても、総務省自身の指摘によっても、「部落差別解消推進法Jを必要とする立法事実は存在せず、その必要は認められないというにとどまらず、部落問題の最終的解決に逆行する立法を看過することは出来ない。

 以上により、部落差別解消推進法制定に反対するものである。

2016年5月29日
公益社団 法人部落問題研究所
2016年度定時総会

部落差別の解消の推進に関する法律案に断固反対する声明 自由法曹団

部落差別の解消の推進に関する法律案に断固反対する声明

この声明のダウンロードはこちら(PDFファイル)

2016年5月19日、自民、公明、民進の3党は、部落差別の解消の推進に関する法律案(以下「本法律案」という。)を衆議院に提出した。同月20日には衆議院法務委員会で趣旨説明がなされ、25日に同委員会で強行可決される見通しである。

 本法律案は、部落問題の解決の障壁となるものであり、基本的人権をまもり民主主義をつよめることを目指す法律家団体である自由法曹団は、この法律案に断固反対する。

部落差別問題については、1982年、同和対策特別措置法が廃止され、その後を継ぐ地域改善対策特別措置法も廃止され、2002年に同和対策事業は終結した。

 これは、部落差別の特徴的な形態である劣悪な住環境等が、各種の同和事業の遂行によって改善傾向にあり、また、職業の自由、居住移転の自由、結婚の自由の侵害という事態も大きく減少するなど、身分的障壁を取り除き、社会的な交流が拡大する方向へと進み、部落解放の客観的条件が大きく成熟したことによるものである。そうだとすれば、着実に解決に向かっている現状においては、本法律案には立法事実がなく、時代錯誤であると言わざるをえない。のみならず、むしろ部落問題による差別、偏見を固定化、永続化し、部落問題の解決のための大きな障壁になり有害である。

 また、本法律案は、えせ同和団体の利権あさりの手がかりとなりうるものであり、過度の糾弾による人権侵害や不公正な行政が行われた負の歴史をふまえていないものと言わざるをえない。

本法律案は、「部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的とする。」としているが、部落差別の定義規定がなく、何をもって部落差別とするのかが曖昧なままである。本法律案は、部落差別の解消に国、地方公共団体の責務を定め、相談体制の充実、必要な教育啓発を行う努力義務等を規定しているが、何をもって部落差別とするかが曖昧なままであれば、あまりに広範な施策が実施されることになりかねず、その施策によって施策の対象となる人々とそうでない人々の間に垣根をつくり、ひいては部落差別問題を再燃させることにつながりかねない。

 また、本法律案は、国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとしている。しかし、これによって新たな差別を掘り起こすことになり、本法律が恒久法であることを踏まえると、調査を続けることによって、部落差別問題を固定化、永久化することにつながりかねない。本法律案は、「情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていること」が立法理由として説明されているが、ネットへの差別的書き込みなどはプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づき、プロバイダに対して削除請求するなど、既存の法律で対応することが可能である。

以上の理由から自由法曹団は、本法律案に断固として反対する。

2016年5月24日
自由法曹団     
団長 荒井新二

「部落差別」法案は解決に逆行 (2016.5.)

「部落差別」法案は解決に逆行

全国人権連事務局長 新井直樹さんに聞く

 自民党、公明党、民進党は「部落差別解消推進法案」の衆院通過を狙っています。同和(部落)の特別法は、問題解決に障害になるとして、14年前に失効しています。全国部落解放運動連合会を発展的に改組した全国地域人権運動総連合(全国人権連)の新井直樹事務局長に今回の法案の問題点を聞きました。

-現状からみて、法案の問題点は?

 差別被差別という新たな国民対立を生むことになる「差別固定化法案」です。 現状は、法務省の人権侵犯処理でも悪質で深刻な部落差別の実態があるとは言えません。旧「部落」や「部落民」に関するインターネット上の書き込みもありますが、現行法と対抗言論によって対処すべきです。部落を問題にする人がたまにいても、時代錯誤だと説得できる自由な対話こそが大事です。

差別を固定化

 法案のように「差別者」を懲らしめることでは、差別は陰湿化し、固定化してしまいます。結婚も部落内外の婚姻が主流となっています。結婚や就職の問題で自殺したという記事は見たことがありません。問題があれば、市民相互で解決に取り組める時代になったのです。そのため、政府も33年取り組んだ同和対策の特別法を2002年3月末で終結しました。全国の精緻な生活実態調査と国民意識調査を実施・分析し、審議会で各界からの意見聴取もして議論を重ね、万全を期して終了したのです。その経緯を無視する今回のやり方はまったく許されません。政府は、一般対策の名で同和事業予算を組み続け、差別の実態があるかのように国民に誤解を生じさせています。逆差別を生じかねないもので、同和事業こそ即刻廃止すべきです。

同和事業廃止を

-新たな法は解決の障害となるのですね。

 部落問題は民族問題ではなく、旧身分が差別理由として残ったものです。国民融合のなかで、社会から消滅してゆけばよいものです。それなのに、「部落差別の解消」をうたえば、国が「部落」と「部落外」を永久に分け隔てることになります。法案は「差別の実態調査」を国や自治体に求めています。根深く存在しているとの誤った理解を「調査」を通じて国民に広げることになります。人権を侵害し、特定の地域や住民を「部落」と示唆するものです。

 法案では、自治体などは相談体制をつくり教育・啓発をすることになっています。実態や経過を無視して自治体や学校に強制する根拠になり、大きな混乱を生じさせることになります。たとえば、埼玉県で同和行政を終了した自治体があります。こんな法律ができれば、終了がほごになり、「解同」(部落解放同盟)などの要求通りに復活するという混乱が生じます。全国各地の同和行政終了自治体でも、混乱を生むことが考えられます。

 2000年に自民、公明両党などの議員立法で制定された「人権教育・啓発推進法」は、人権問題を差別問題に矮小(わいしょう)化し、解決の実態から乖離(かいり)した「解放教育」や「同和教育」に法的根拠を与えてきました。こんな法こそ廃止すべきです。

-自民党の狙いをどうみますか。

 自民党は差別禁止などという法の名で利権維持をはかる「解同」などの動きを取り込みつつ、自らの国民管理に利用しょうとしています。自民党は国民主権の憲法を、国が人権を管理するものへ改悪することを狙っています。それと軌を一にした動きです。人権問題の深刻さから国民の目をそらし、人権問題はあたかも差別間題がすべてであるかのごとく描くものです。立法事実や「部落差別」の概念すらまともに議論をせずに、制定ありきというのはもってのほかです。憲法改悪、「部落差別永久化法」には、国民諸階層とともに断固反対の運動を広げていきます。

(2016年5月22日「しんぶん赤旗」掲載)

2分でわかる 部落問題と教育 (2016年版)

「2分で分かる部落問題解決と教育」のダウンロードはこちら(A4版1枚)(PDF)

1.部落問題とは

 江戸時代までの日本の社会は身分をもとにする社会でした。明治以後の日本の近代化の中でも、地域社会の中では江戸時代の賤民身分につながりがあるとされた一部の地域が社会的差別を受けていました。
 封建時代の残りものが「部落問題」です。

2.部落問題はどこまで解決したか

 戦後、日本国憲法の成立と民主主義的意識の高まりのもと、1969年から始まった同和対策事業は国地方自治体あわせて15兆円が投入され、高度経済成長とともに地域の状況を一変しました。

 2002年、特別法の失効とともに同和対策事業は終了しました。2016_01_28_2funde

 劣悪な地域の環境は改善され、「部落」と呼ばれた集落の景観もなくなり、周辺地域との分別もできなくなりました。教育や就職・結婚も改善され、居住する人々の入れ替わりも激しく、誰が従来からの居住者か、誰がそうでないかも分からなくなりました。国民の意識も大きく変化し、もはや、日常の暮らしの中に部落問題はありません。

 大阪府教委も「誰が地区の人か、誰も説明できない」「今はもう被差別部落なんてないよという」と説明しています。

 生活困難が集積した地域は特別措置法対象地域の5倍もあることが府の調査で明らかになっています。今日の課題は格差と貧困であり、部落問題はもはや過去の問題です。

3.部落問題の解決とは

 社会や人間関係で、出自を意識しない、そんなこと関係ないわ、という状態になることが部落問題の解決です。まだ誤解や偏見を持つ人がいるにしても、「江戸時代につながる話なんて、そんな昔のことを今更何なの」「何の関係あるの」「そんなことで人をみたらあかんやろ」と周りの人はたしなめます。誤解や偏見は社会として受け入れられることはもうありません。

4.学校が教えるマイナスイメージ

 今日では同和問題を「学校の授業で知った」というのが40代以下では過半数です。その結果、「学習経験を積むほど、『就職差別や結婚差別は将来もなくすことは難しい』という悲観的な意識が広がった」と報告されています(大阪府民意識調査2010年)。

 同和対策事業を終わらせた理由の1つに、行政が特別対策を続ける限り、「あそこは特別」という市民の意識が続くということがあります。学校教育も同じではないでしょうか。「部落問題学習」をする学校では「差別は今もある」というだけで、部落問題は解決に進んできたという希望ある事実を教えていません。

5.憲法と自治の力を子どもたちのものに

 「人は尊重すべきもの」「人は協同して生きるもの」ということを子どもたちが自分で理解していくように工夫しましょう。学校では「部落」や「同和」という言葉を使わないで指導することが大切です。
 よく「将来、部落問題に出会った時のために」教えておかないと、と説明されることがあります。一見、まともに見えますが、逆に言えば、将来、学校では全く扱っていなかった問題に直面した子どもはお手上げになってしまうということでしょうか。いつまでもいつまでも学校で部落問題を教え続けるのでしょうか。「人は尊重すべきもの」「人は協同して生きるもの」という立場で考え行動できる子であれば、さまざまな問題に直面した時に適切に判断できることでしょう。

 大阪府民意識調査(2010年)も「『同和問題は知らない』という人の人権意識が低いわけでもありません。」としています。「人権教育」というなら、憲法と自治の力を子どもたちのものにすることではないでしょうか。

人権総合学習(2000)

人権総合学習

 「人権総合学習」は部落解放同盟を支持し連携する一部の教職員が提唱している「総合学習」。「総合的な学習の時間」などに実践しようというもの。

「『総合的な学習の時間』の批判と創造 わたしたちの教育課程づくり」所収 (大阪教育文化センター・教育課程研究会「総合的な学習の時間」検討プロジェクト発行 2000年)

 今、同和教育研究組織や「解放教育」論者の側から「人権総合学習」がさかんに提唱されています。

 府教委や市教委など教育行政の側からも「人権総合学習」というネーミングをしないものの、「『総合的な学習の時間』への対応を見通した」(府教委)「人権教育」が提唱されています。

 府教委の「人権教育推進プラン」では小学校高学年や中学校での「人権学習プログラム」として6つの「領域」を掲げています(子どもの人権、同和問題、男女平等、障害者、在日外国人・国際理解、様々な人権問題)。大阪市教委の「人権教育指導の手引き」ではll項目を例示しています(同和教育、在日外国人教育、「障害及び障害者問題の理解」についての教育、児童の権利に関する条約、男女平等教育、進路指導、集団育成、国際理解教育、平和教育、「いじめ」の指導、環境教育)。

 官製「人権教育」や「解放教育」論者の言う「人権総合学習」は次のような特徴をもっています。

 第1に、それは「人権」概念を歪めるものです。

 国の人権擁護推進審議会の答申でさえ、「我が国の人権に関する現状については国内外から、国の諸制度や諸施策そのものの在り方に対する人権の視点に対する批判的意見も含めて、公権力と国民との関係や国民相互の関係において様々な人権問題が存在すると指摘されている」と極めて申し訳程度とはいえ、公権力と国民との関係における人権問題について触れています。世界の人権獲得の歴史は、時の権力者との闘いの歴史です。官製「入権教育」は「人権」を国民相互の問題に焦点化させ、公権力や社会的権力と民衆との人権問題を「人権」の視野からそらすものです。それは、「人権」概念の倭小化であると同時に、「人権」を権力支配の道具にするものです。

 第2に、「人権」の名を借りた「心の教育」つまり第二道徳です。

 官製「人権教育」などは、「人権」を差別問題に倭小化するとともに、子どもたちに他人の人権を侵害しないようにという心がけを求めます。そこには、子ども一人一人に人権があり、あなたが権利行使の主体者なんだよというメッセージはありません。

 吉田一郎氏(滋賀大学)は次のように指摘しています。

 心の持ち方を強要する教育は、精神の自由、内心の自由という人権の重要な基本原則に対する無理解を示すものであり、教育論としては観念的に自己改造を求めるものである。それを『責めたてる精神主義』と特徴づけることができる。…まじめで正直な子どもであればあるほど、『善性』に達しきれない自らを責める自虐的、自責的な気持ちをいだくであろう。

 …『善性』と『悪性』の観念的措定の非現実性、欺瞞性を敏感に感じる子供は、教師の前では善なる姿を見せ点数をかせぎ、そうでないところではそれを無視するというように『善』と『悪』を二面的に功利的に使いわけるであろう。(吉田一郎「『人権教育』と観念的道徳教育論」=「部落問題研究」143輯)

 第3に、人権問題の解決を教育に求めるものであり、「教育万能論」「教育決定論」である。

 子どもの持っている可能性を最大限にのばすという教育の営みを放棄し、特定の問題を解決するために教育をその手段におとしめるものです。子どもたちや国民を官製「人権教育」の教育や啓発の対象とする発想は、戦前において国民教化の役割を果たした教育の役割と同じ機能を求めるものです。子どもや国民が人権行使の主体であるという視点はありません。

 第4に、部落問題解決の到達段階を無視し、「同和教育」を「人権教育」の中に流し込みこれからも続けようとするものです。

 一部の学校では、「総合的な学習の時間」について、これまでの「人権・部落問題学習」をそのまま続ければいいのだと主張されています。従来の「にんげん」特設授業を「総合的…時間」としてそのまま続けるというその中に、生活の中に部落問題がなくなった現在の到達点を無視した「同和教育」をそのまま続けようとするものです。

 第5に、教育行政が特定の教育方法を推奨する、しかも「人権」の名において。これではブラックユーモアです。

 「教諭は児童の教育をつかさどる」(学校教育法)と規定されているとおり、教育実践は教員の権限です。「法的拘束力がある」とされている学習指導要領ですら特定の教育方法までは規定していないし、教員の裁量を認めているとしています。  教育委員会が特定の教育方法(型=パターン)を推奨することは前代未聞であり、それが「人権」の名で行われるのは大きな矛盾です。これまでの官製「同和教育」がそのままではやっていけないことから、新しい「型」に飛びついたものでしょう。しかし、そこで教育する内容は子どもたちの実生活の矛盾と切り結ぶものでなく、現実の社会の変革に参加するものでなく、机上の論議で「参加・体験」した気分にさせるだけのものでしかありません。それは、現実の社会にある問題の科学的な解明への努力から目をそらし、心がけの問題に解消するようにたくみにしくまれたものと言えるでしょう。  民主教育の中ですすめられてきた「生活綴方」という教育方法こそ、世界に誇る「参加体験」型教育方法ではないでしょうか。

(柏木 功)