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「今も差別がある」で終わってはいけない!
~部落問題学習の《罠》に注意
文学・生活綴方の大切さを改めて~
お話:柏木 功 さん(大阪教育文化センター「部落問題解決と教育」研究会代表)
日時:2022年11月13日(日)13時30分~16時
会場:エル・おおさか(大阪府立労働センター)
南館7階 南71 【参加無料】
人権教育事典は、部落問題の現代の到達点にたった教育の課題を考えるサイトです。
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「今も差別がある」で終わってはいけない!
~部落問題学習の《罠》に注意
文学・生活綴方の大切さを改めて~
お話:柏木 功 さん(大阪教育文化センター「部落問題解決と教育」研究会代表)
日時:2022年11月13日(日)13時30分~16時
会場:エル・おおさか(大阪府立労働センター)
南館7階 南71 【参加無料】
平成28年1月22日
旧同和対策事業対象地域の課題について
―実態把握の結果及び専門委員の意見を踏まえて―
大阪府府民文化部人権局
<この内容は以下からダウンロードできます>
➜ 旧同和対策事業対象地域の課題について(Word版)(大阪府HP)
➜ 旧同和対策事業対象地域の課題について(PDF版)(当サイト)
平成13年9月の大阪府同和対策審議会答申「大阪府における今後の同和行政のあり方について」(以下「平成13年答申」という。)及び平成20年2月の大阪府同和問題解決推進審議会提言に基づき、大阪府は同和問題の解決に向けて一般施策による取組みを進めてきている。
旧同和対策事業対象地域1(以下「対象地域」という。)に見られる課題については、平成13年答申において、特別措置としての同和対策事業により「かつての劣悪な状況は大きく改善された」ものの、「進学率、中退問題など教育の課題、失業率の高さ、不安定就労など労働の課題等が残されているとともに、府民の差別意識の解消が十分に進んでおらず、部落差別事象も跡を絶たない状況である」と指摘されている。また、「住民の転出入が多く、特に学歴の高い層や若年層が転出し、低所得層、母子世帯、障害者など、行政上の施策等による自立支援を必要とする人びとが来住している動向がみられる。」とされている。
大阪府では、平成13年答申で指摘された、対象地域に見られる生活実態面の課題がどのように推移しているのかを把握し、適切かつ効果的な一般施策の取組みを進めていくために、行政機関が福祉や教育等の様々な行政施策を実施する中で既に保有しているデータを集計・分析する「行政データを活用した実態把握」を平成17年度及び同23年度に対象地域が存在する市町2(以下「関係市町」という。)とともに実施した。
その結果、対象地域では関係市町の全体と比較して生活保護受給率が高いこと、大学進学率が低いことなど、依然として課題が見られることがわかった。
しかし、平成13年答申で指摘された課題のうち、失業率の高さ、不安定就労など「労働の課題」については、「行政データを活用した実態把握」では関連するデータがなく、十分に把握できなかった。
そこで、平成22年の国勢調査データを集計・分析し、行政データでは十分に把握できなかった課題の推移を把握することを目的として、「国勢調査を活用した実態把握」を実施した。
その結果として、対象地域では、大阪府全域と比較して非正規労働者の割合が高いこと、完全失業者の割合が高いことなど、依然として課題が見られることがわかった。
これらの実態把握の結果については、大阪府同和問題解決推進審議会において数次にわたって報告してきたところである。
実態把握の結果からは、対象地域等に見られる生活実態面の課題について、一定の傾向を示すデータが把握できたが、今後の大阪府の取組みの参考とするために、これらのデータや対象地域の課題など、実態把握の結果をどのように捉えるべきかについて、同和問題や差別論を専門とする学識者を大阪府同和問題解決推進審議会の専門委員に委嘱して幅広く意見を聴取した。
大阪府が今回実施した実態把握及び専門委員からの意見聴取の概要は、次のとおりである。
①行政データを活用した実態把握
大阪府及び関係市町が、福祉や教育等、様々な行政施策を実施する中で既に保有しているデータを活用して、以下に記載する項目について、平成23年度における対象地域に係るデータと関係市町の全体のデータの集計を行ったものである。また、平成12年度に実施した実態等調査3(以下「平成12年調査」という。)及び平成17年度に実施した「行政データを活用した実態把握」の結果等と比較・分析を行っている4。
【項目】
1)年齢階層別人口構造(男女別)
2)世帯の状況
3)住民税課税人口の状況
4)生活保護受給世帯の状況
5)障がい者手帳所持者の状況
6)福祉医療助成受給者の状況
7)介護保険制度 要介護認定者の状況
8)ホームヘルパー及びガイドヘルパー派遣世帯の状況
9)認可保育所入所児童の状況
10)乳幼児健診未受診児の状況
11)市町立中学校 進学等の状況
12)市町立小・中学校 長欠児童・生徒の状況
13)市町立小・中学校 就学援助利用の状況
14)府立高等学校 進学等の状況(※)
15)府立高等学校 中退の状況 (※)
(※)14)、15)の項目については、対象地域と府全体の状況を比較している。
②国勢調査を活用した実態把握
平成22年の国勢調査データを活用して、以下に記載する項目について、対象地域に係る数値と大阪府全域に係る数値の集計及び分析を行ったものである。
また、以下の項目のうち可能なものについて、平成12年調査の集計結果との経年比較5を行っている。
また、平成13年答申における「これまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題としてとらえることが可能であったが、同和地区における人口流動化、とりわけさまざまな課題を有する人びとの来住の結果、同和地区に現れる課題は、現代社会が抱えるさまざまな課題と共通しており、それらが同和地区に集中的に現れているとみることができる」との指摘について、生活実態面の課題の集中が対象地域以外にも見られるのかどうかを検証するため、「基準該当地域」の考え方6を導入している7。
さらに、対象地域における生活課題の状況が住宅エリアや商工業エリアなどの地域の状況によって異なるのかどうかについて把握するため、対象地域を都市計画法上の区域区分、用途地域により9つに類型化し、大阪府全域と比較した。また、対象地域の特徴を見るため、対象地域に隣接する地域のうち、対象地域と同じ地域類型となっている地域を抽出し、それぞれ対象地域と比較している8。
【項目】
1)人口・世帯の状況
1-1)世帯員の年齢構成
1-2)家族類型(経年比較)
1-3)世帯類型(経年比較)
2)教育の状況
2-1)世帯員の学歴構成(経年比較)(男性)(女性)(年齢階層別)
3)労働の状況
3-1)労働力状態(経年比較)
3-2)労働力率(年齢階層別)
3-3)就業率(年齢階層別)
3-4)完全失業率(年齢階層別)
3-5)従業上の地位(経年比較)(年齢階層別・男性)(年齢階層別・女性)
3-6)職業構成(年齢階層別)
4)住まいの状況
4-1)住宅の所有形態(経年比較)
5)移動者(転入者)の状況
5-1)移動者(転入者)の状況
5-2)現住地居住期間と世帯類型
5-3)現住地居住期間と学歴構成
5-4)現住地居住期間と従業上の地位
5-5)現住地居住期間と住宅の所有形態
①専門委員の選任
大阪府同和問題解決推進審議会規則第4条9に基づき、同和問題や差別論に関する学識者の中から、以下の4名を同審議会専門委員として委嘱し、実態把握の結果をどのように捉えるべきかについて意見を聴取した。
氏名 所属
髙田 一宏 大阪大学大学院人間科学研究科准教授
灘本 昌久 京都産業大学文化学部教授
西田 芳正 大阪府立大学地域保健学域教育福祉学類教授
三浦 耕吉郎 関西学院大学社会学部教授
(50音順・敬称略)
②意見聴取の内容
以下の論点を設定し、それぞれの項目について意見聴取を実施した。
≪論点≫
人口の流動化が進み、「対象地域」を取り巻く状況が大きく変化する中で、今日において対象地域に生じている課題をどう捉えるべきか。
≪実施日時及び内容≫
年月日 項目 備考
第1回 平成27年6月15日 全体会合
・実態把握の結果の受け止め方
第2回 平成27年8月11日~24日 個別に実施
・今回の実態把握の評価
・対象地域に課題が集中する要因
・対象地域とそれ以外の地域における、課題が集中する要因の違いの有無
・対象地域における生活実態面の課題と部落差別との関わり
・専門委員が想定する地域、個人を特定した調査
・今日における対象地域の課題の捉え方
第3回 平成27年10月27日~11月6日 個別に実施
・第2回聴取意見の確認
・実態把握及び専門委員の意見を踏まえた取りまとめについて
「行政データを活用した実態把握」及び「国勢調査を活用した実態把握」の結果ならびに専門委員から聴取した意見から、下記のことが推認できる。
○対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにすることはできない。 ○対象地域と同様の課題の集中が、対象地域以外にも見られる。 ○対象地域で見られる課題は、必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできない。 |
具体的には次のとおりである。
対象地域で見られる課題の現れ方は多様であり、一括りにすることはできない。 |
国勢調査等を活用した実態把握の結果からは、対象地域に、大阪府全域と比べて様々な点で依然として生活実態面の課題があることが確認できる。
例を挙げると、表1-1から、対象地域では大阪府全域と比べて、最終学歴が小・中学校卒の割合が高い一方で、大学・大学院卒の割合が低い。また、対象地域では完全失業者の割合及び非正規雇用比率は大阪府全域と比べて高いことがわかる。
表1-2から、対象地域では全体10に比べて住民税非課税人口の割合、生活保護受給世帯の割合及び府立高校生の中退率が高く、大学・短大進学率が低くなっている。
なお、経年比較では、大学・短大進学率や中退率は改善傾向にある。また、対象地域で数値が悪化した項目は全体でも悪化しており、対象地域で数値が改善した項目は全体でも改善を示している。
「国勢調査を活用した実態把握」において、対象地域における生活課題の状況が住宅エリアや商工業エリアなどの地域の状況によって異なるのかどうかについて把握するために、対象地域を都市計画法上の区域区分・用途地域別に、表2-1のとおり9つに類型化した。
対象地域を類型化して、それぞれの項目を見てみると「第一種・第二種中高層住居専用地域」、「第一種・第二種住居地域」及び「準工業地域」については、対象地域全体の課題の傾向とほぼ同様の傾向となっているが、対象地域全体の傾向と大きく異なる傾向を示す用途地域もあることがわかる。
例として、表2-2にあるとおり、居住者の学歴構成では、「近隣商業地域」や「商業地域」における大学・大学院卒業者の比率が、「第一種・第二種住居地域」、「準工業地域」や「工業地域」に比べて2倍程度となっている。
また、労働者の非正規雇用比率では、「工業地域」や「市街化調整区域」は、「第一種・第二種中高層住居専用地域」や「第一種・第二種住居地域」よりも低く、大阪府全域と比べても同等程度であることなどが挙げられる。
このように、対象地域の中でも、地域類型により課題の現れ方は一律ではない。大阪はまちの状況が地域によって、もともと多様であり、こうしたことが、課題の現れ方に反映されていると言える。
※ 「第一種・第二種低層住居専用地域」及び「準住居地域」は人口規模が小さいため、数値は参考として記載。
「国勢調査を活用した実態把握」において「基準該当地域」の考え方を導入するに当たって、高等教育修了者比率や完全失業率など、表3-1に示す6つの指標を抽出基準として設定している。
この抽出基準を対象地域自身にあてはめた場合、表3-2にあるとおり、指標が6つとも該当する地域の人口規模が対象地域全体の10.3%、5つ該当する地域が18.1%12を占める一方で、まったく該当しない地域が19.0%13、1つだけ該当する地域が21.0%14を占めており、対象地域の間でも、課題の状況や課題につながる要素には、ばらつきがある。
対象地域と同様の課題の集中が、対象地域以外にも見られる。 |
国勢調査を活用した実態把握においては、対象地域と同様の生活実態面の課題の集中が対象地域以外にも見られるのかどうかを検証するため、p11の表3-1にある6つの指標を抽出基準に用いて、いずれか3つ以上の指標に該当する地域を抽出し、合計したものを「基準該当地域」として15対象地域と比較した。
その結果を見ると、表4にあるとおり、対象地域の人口規模が約8万人であるのに対して、基準該当地域では人口規模が約41万人となっている。
このことから、対象地域と同様の課題の集中が、対象地域以外にも見られることが確認できる。
実態把握の結果をみると、表5にあるとおり、対象地域において「公営の借家16」に居住する世帯の割合が40.7%、基準該当地域においては45.5%を占めており、大阪府全域において「公営の借家」に居住する人の割合6.3%と比較して、6~7倍の構成比となっていることが確認できた。
公営住宅や改良住宅は、対象地域をはじめとした多くの地域における生活環境の改善に寄与するとともに、住宅に困窮する低額所得者のセーフティネットとしての役割17を果たしている。
ただ、制度上、公営住宅の入居者は、収入額に制限があり、収入超過者18又は高額所得者19と認定された場合、住宅を明渡すことを求められる。また、新たに入居する人も低額所得者である。このため、公営住宅や改良住宅が多く整備されている地域においては、結果として、生活実態面の課題を有する人が多く居住することとなり、このことが、課題の集中が見られる背景のひとつと考えられる。
対象地域で見られる課題は、必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできない。 |
平成12年調査において対象地域の居住者の出生地について調査しており、表6-1にあるとおり、平成12年当時で対象地域の出身でない来住者が36.7%を占めていた。
また、国勢調査を活用した実態把握でまとめた対象地域の現住地居住期間別の世帯員数を見ると、表6-2にあるとおり、現住地の居住期間が10年未満の住民が約25,000人、対象地域人口の32.0%となっている。
これには同一対象地域内で転居した場合も含んでいるが、この10年間に対象地域外から移動してきた人が多いと考えることができる。
一方で、こうした対象地域外からの移動を含めた対象地域の人口は、平成22年に79,411人となっており、平成12年の95,468人から約16,000人減少している。この減少には自然減も含まれているが、この10年間で対象地域の人口がかなり流出したと考えることができる。
さらに、平成12年調査では「出生地が現住地区」としている人の割合が47.1%であるのに対し、国勢調査を活用した実態把握では、対象地域で出生時から現住地に居住している人の割合は8.6%となっており、大阪府全域の8.8%とほぼ同じである。
平成12年調査と実態把握では調査方法が異なるため20厳密な比較は困難であるが、対象地域で人口が減少していることを踏まえると、対象地域で出生時から居住している人は大幅に減少していると考えられる。
これらのことを踏まえると、対象地域の人口の流動化がかなり進んでいると考えられる。
専門委員の意見によると、対象地域に住んでいることを知っていても、同和問題に関係がないと思っている人もいれば、そもそも住んでいるところが対象地域であるということを知らない人もいる。
なお、特別対策が実施されていた時期に行われた平成12年調査においても、表7にあるとおり、調査対象者の38.1%が「自分は対象地域出身者であるとは思わない」と回答していた。
専門委員の意見によると、歴史的経緯を考慮すれば、対象地域に見られる生活実態面の課題には、部落差別から何らかの影響を受けているものもあると考えられるが、実際に影響があるのか、あるとすればその影響が具体的にどのようなもので、どの程度のものかということは、この実態把握ではわからない。
このように、部落差別の影響の有無や程度などはわからないものの、上記の対象地域の人口の流動化や、住民の意識の状況を踏まえると、対象地域に見られる生活実態面の課題は、必ずしも全てが部落差別の結果と捉えることはできないものと考えられる。
◆参考:対象地域における部落差別の影響の把握について対象地域に見られる生活実態面の課題に対する部落差別の影響を把握するには、対象地域の住民を対象として調査対象者を抽出し、それらの対象者に対して調査の趣旨及び居住地が対象地域であることを明示した上で、対象地域出身者であることの自己認識、被差別体験の有無及び生活実態面の課題と被差別体験の関連を聴く必要がある。 しかしながら、対象地域の所在地名は大阪府個人情報保護条例において、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報として取り扱われており、原則として収集禁止とされているほか、個人情報の外部への提供が原則として禁止されている(※)。 特別対策としての同和対策事業が終了した現在においては、調査対象者に対して、居住地が対象地域であることを教示し、対象地域出身者であるか否か、差別体験があるか否か等のセンシティブな情報を収集する調査を実施することは困難である。 また、大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例では、興信所、探偵社業者及び土地調査等を行う者に対して対象地域に関する調査・報告を規制している21。 大阪府は本条例の規制対象ではないが、特別対策としての同和対策事業が終了した現在において、条例により差別防止の観点から規制している行為(対象地域の調査・報告等)を、規制当局である大阪府が行うことは不適切である。
|
意見聴取においては、既に記述した以外にも、専門委員から実態把握、部落差別等に関連して様々な意見があった。概要は次のとおりである。
・ 対象地域に見られる生活実態面の課題への部落差別の影響を把握しようとするのであれば、対象地域の住民に対して、被差別体験の有無や転出入の理由等を聞き取るような調査が必要と考える。
・ 部落差別意識と差別的言動の問題は残っており、生活実態面の課題に関しても、これらの影響がなくなったとまでは言い切れない。それを解明するには、行政が行うのは難しいかもしれないが、詳しい調査が必要だと思う。
・ 差別をなくす目的があるとはいえ、対象地域を特定した調査をするということは、対象地域であることを知らない人にも対象地域であることを教示することになり、かえって差別を引き起こすおそれがある。
・ 特別対策が終了した今、行政が対象地域の住民を特定して調査することは難しいだろう。
・ 行政としては、生活、教育、健康の確保といったレベルの実態把握ができていれば十分ではないか。
・ この実態把握では平成12年調査にあったような部落差別と課題の因果関係についてのデータが収集できないため、対象地域に見られる課題と部落差別との因果関係の有無について言及することはできない。
・ 生活実態面の課題に関しては、対象地域以外にも課題の集中が見られることから、対象地域も含めて広く対策することが必要と考える。
・ 同和問題に限って格差是正策や貧困対策をするというのではなく、全ての人を カバーする施策を行うことが基本で、その上で特に状況が厳しいところに手厚い対策が必要と考える。
・ 生活困窮者の多い地域においては、NPO等が主体となった、住民と行政をつなぐ地域拠点があった方がいい。
・ 大阪府全域と対象地域の状況を比較すると、若い世代において格差がかなり残っているということは重要なポイントである。
・ 対象地域の人の生活史に関する調査をすると、日常的にそれほど差別は受けていない人や、居住地が対象地域であることを知らない人も多い。
・ 部落差別の原因は江戸時代の身分差別にあるという見解で同和対策事業が行われてきたが、今になって、部落差別の原因を中世にさかのぼる人や、近代になって出てきたというようにみる人もいて、同和問題が生み出される原因の解明がまだなされていないと考える。
・ 近代以降、都市部の部落では流動化が激しくなっており、昔ながらの仕事、血筋(身分)、地域が一体となった部落差別は現在では存在しない。しかし、部落差別とマイノリティや貧困などの問題とが混じり合っており、それによって地域が社会的排除の対象とされていることが「部落問題」であると考える。その意味からすると、「対象地域の課題は必ずしも全てが部落差別の結果と捉えられない」という表現は適切でないと思う。
・ 基準該当地域のような、対象地域と同様に生活上の困難を抱えている地域は昔から存在していた。また、当時から、対象地域の課題の中には、部落差別によるものと、他の地域とも共通する貧困等の課題が混在していた。したがって、平成13年答申の「これまでの同和地区のさまざまな課題は同和地区固有の課題であった」という認識は妥当性を欠いていたと考える。
・ 大阪では、被差別部落の産業が比較的残っている印象がある。被差別部落の産業があると、生活の安定という点ではいいが、そこが部落だという周囲の視線は残りやすい。
・ 改良住宅や公営住宅の整備により、対象地域の環境改善が進んだことは良かったが、いろいろな階層や年齢層の人が定住できず、結果的に対象地域に低額所得者が集住するようになってしまっている。
・ 現住地居住期間10年未満の住民の割合を対象地域と大阪府全域で比べると、対象地域の割合が低くなっており、最近10年間で、大阪府全域に比べて対象地域に移動してきた住民の割合が低いと考えられる。また、対象地域の人口も減少していることから、今回の実態把握から指摘できることは、人口の流出入というよりも、対象地域外への人口の流出だと思う。
・ 対象地域の公営住宅でも、駅に近いなど利便性の高いところは外部から人が入ってきているが、利便性の低いところはあまり人が入ってきていない。公営住宅も一括りにすることはできない。
・ 改良住宅は、公営住宅と異なり、制度上、本来は住民が永続的に入居可能なものとして整備されたが、後に改良住宅にも導入された公営住宅と同様の家賃体系が、所得水準の上昇した住民の流出を促したと言える。
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1 平成13年度まで特別措置としての同和対策事業を実施してきた地域(平成12年度に大阪府が実施した「同和問題の解決に向けた実態等調査」の対象地域)。
2 技術的理由等により、一部市町のデータが含まれていない。
3 平成12年5月に、大阪府が実施した「同和問題の解決に向けた実態等調査(生活実態調査)」。対象地域における満15歳以上の者の中から、層化無作為抽出法により、調査対象者として10,000人を抽出し、調査・集計したもの。
4 この調査結果については、平成25年2月に同和問題解決推進審議会で報告。
5 国勢調査は悉皆調査、平成12年調査は抽出調査であり、調査方法が異なるため厳密な比較は困難であるが、おおよその傾向を見るため「経年比較」として示している。
6 有識者の知見を得て6つの指標を設定し、いずれか3つ以上の指標に該当する地域を抽出し、合計したものを「基準該当地域」として対象地域と比較している。p11及びp12参照。
7 この段落までの内容については、第一次報告として平成26年9月に同和問題解決推進審議会で報告。
8 この段落の内容については、第二次報告として平成27年2月に同和問題解決推進審議会で報告。
9 規則第4条「審議会に、専門の事項を調査審議させるため必要があるときは、専門委員若干人を置くことができる。」
10 各項目の比較対象としての「全体」については、p3参照。
11 制度の変更がなされていることから、数値の増減について単純比較は困難である。
12 指標数5の累積28.4%-指標数6の累積10.3%から算出。
13 指標数0の累積100%-指標数1の累積81.0%から算出。
14 指標数1の累積81.0%-指標数2の累積60.0%から算出。
15 「基準該当地域」は、課題の集中が対象地域だけに現れているかを検証するための調査上の手法として導入したものであり、特定の地域を指し示すものではない。
16 「公営の借家」には、公営住宅と改良住宅(住宅地区改良法に基づく住宅地区改良事業等により建設された住宅)が含まれる。
17 公営住宅法第1条「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。」
18 公営住宅法第28条第1項 「公営住宅の入居者は、当該公営住宅に引き続き三年以上入居している場合において政令で定める基準を超える収入のあるときは、当該公営住宅を明け渡すように努めなければならない。」
19 公営住宅法第29条第1項 「事業主体は、公営住宅の入居者が当該公営住宅に引き続き五年以上入居している場合において最近二年間引き続き政令で定める基準を超える高額の収入のあるときは、その者に対し、期限を定めて、当該公営住宅の明渡しを請求することができる。」
20 平成12年調査は抽出調査であり、出生地が現住の対象地域か否かを聞いているが、実態把握は悉皆調査である国勢調査に基づいており、現住地の居住期間から推定している。
21 大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例第5、第7及び第12条。
(注)これは大阪府府民文化部人権局「旧同和対策事業対象地域の課題について」p.16(2016.1.22.)に掲載されているものです。人や地域を特定した調査をしてはならないことを明らかにした貴重な内容です。
対象地域に見られる生活実態面の課題に対する部落差別の影響を把握するには、対象地域の住民を対象として調査対象者を抽出し、それらの対象者に対して調査の趣旨及び居住地が対象地域であることを明示した上で、対象地域出身者であることの自己認識、被差別体験の有無及び生活実態面の課題と被差別体験の関連を聴く必要がある。
しかしながら、対象地域の所在地名は大阪府個人情報保護条例において、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報として取り扱われており、原則として収集禁止とされているほか、個人情報の外部への提供が原則として禁止されている(※)。
特別対策としての同和対策事業が終了した現在においては、調査対象者に対して、居住地が対象地域であることを教示し、対象地域出身者であるか否か、差別体験があるか否か等のセンシティブな情報を収集する調査を実施することは困難である。
また、大阪府部落差別事象に係る調査等の規制等に関する条例では、興信所、探偵社業者及び土地調査等を行う者に対して対象地域に関する調査・報告を規制している21。
大阪府は本条例の規制対象ではないが、特別対策としての同和対策事業が終了した現在において、条例により差別防止の観点から規制している行為(対象地域の調査・報告等)を、規制当局である大阪府が行うことは不適切である。
※ 大阪府個人情報保護条例(抜粋)
部落問題とその解決を考える
全国水平社創立100周年記念講演会 記録集
(2022年8月発行)
発行 大阪歴史教育者協議会
大阪はぐるま研究会
大阪教育文化センター「部落問題解決と教育」研究会
【おもな内容】
2022年4月10日におこなった記念講演会の記録集です。
講演1 「日本近代史のなかの部落問題とその解決について」
広川禎秀さん(大阪市立大学名誉教授・部落問題研究所理事)
講演2 「(現状)部落問題とその解決を考える」
谷口正暁さん(民主主義と人権を守る府民連合執行委員長)
質疑討論、各講演のレジュメ、参考文献
【頒価500円】(送料別・8冊まで140円)
申込みは大阪教育文化センターまで
℡ 06-6768-5773
kyoubun☆minos.ocn.ne.jp ☆は@に替えてください。
第46回 大阪はぐるま研究集会 ご案内
主催 大阪はぐるま研究会
➜ この案内のダウンロードはこちら(PDF)
1.期日 2021年7月30日(土)
2.会場 玉水記念館
大阪市西区江戸堀1丁目10-31
最寄り駅:地下鉄四ツ橋線「肥後橋」8番出口 西へ1分
京阪中之島線「渡辺橋」12番出口 南へ7分
3.日程
9:00 受付
9:20 全体会【午前の部】(詩の朗読、作品研究①、作品研究②、特別報告)
12:30 昼食休憩
13:30 全体会【午後の部】(作品研究③・特別講演・記念講演)~17:00
1.開会あいさつ
2.詩の朗読
3.作品研究① 『スーホの白い馬』(低学年)
4.作品研究② 『世界一美しいぼくの村』(中学年)
5.特別報告
1.作品研究③ 『たずねびと』(高学年)
2.特別講演
── 山本健慈さん プロフィール ──
1948年山口県生まれ。和歌山大学長や国立大学協会専務理事を勤め、現在、学校法人大阪観光大学(大阪府熊取町)の理事長。幼い時に同級生の貧困を目にした。「理不尽な社会を教育で変えたい」と決意して教育学者に。和歌山大学学長時は特別秘密保護法などを懸念し、卒業式で「自由の抑圧に抗してほしい」と呼びかけた。他の国立大学に声をかけ、国からの運営費交付金の減額への危機感を訴える会見を開くなど「物言う学長」として知られた。熊取町の無認可保育所の法人化や図書館の設立・運営にも関わってきた。
3. 記念講演
── 西谷文和さん プロフィール ──
1960年生まれ。京都府出身。立命館大学理工学部中退。大阪市立大学経済学部卒業。吹田市役所勤務を経て、現在フリージャーナリストで、NGOイラクの子どもを救う会代表。主にイラク、アフガニスタン、シリア、南スーダンなど中東・アフリカ地域を取材し、テレビや新聞などで現地情報を伝える。2006年度「平和協同ジャーナリスト大賞」を受賞。
3.閉会あいさつ
■物語文
◆【スーホの白い馬】(大塚勇三 作)(光村図書2年)
「この教材は光村図書に昭和40年から50年余り掲載され続けています。最近はモンゴル出身の研究者から雑誌や新聞、新書版でいろいろと問題点が指摘されています。授業化に当たっては、それらも参考にして、一つの文学作品として読み、教材研究をしていきたい。[箕面はぐるま研究会]
◆【世界一美しいぼくの村】(小林豊 作)(東京書籍4年)
アフガニスタンの村パグマンに住む少年ヤモの一日を取り上げ、日々の生活が戦 争により破壊される悲惨さを感じさせる物語です。最後の一文で物語が大きく展開し、読み手に強い印象を与える。ヤモの家族や村に対する思いを読み、最後の一文について考えたい。[泉南はぐるま研究会]
◆【たずねびと】(朽木祥 作)(光村図書5年)
たずねびとは、駅の構内のポスターで見つけた同姓同名の「楠木アヤ」さんをたずねていく物語です。広島の平和記念資料館や原爆供養塔などを訪れ変わっていく綾の心情を読み取り、そこから生きていることや平和であることの意義を考えていきたいと思います。[羽曳野はぐるま研究会]
箕面はぐるま研究会
羽曳野はぐるま研究会
和泉どの子も伸びるサークルたんぽぽ
泉南はぐるま研究会
人権と社会科研究サークル
1.参加費 2000円(学生は1000円)
2.申し込み当日参加の方、本部受付でお願い致します。
なお、従来通りハガキ・Fax・E-mail・電話等での参加申し込みも受け付けます。その場合も本部で受付をお願い致します。
事前申し込みの際は、
①氏名 ②郵便番号、自宅住所・電話番号 ③勤務先 ④参加希望分科会をご記入ください。
⑤締め切り 7月25日(日)
3.申し込み・問い合わせ先
〒 590-0423 泉南郡熊取町自由が丘2-15-13 辻まち子
E-Mail machiko-tsuji◎ares.eonet.ne.jp ←◎は@に変えて下さい。
Tel&Fax 072-453-5214
4.緊急事態宣言が出されている場合は、中止とさせていただきます。
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☆作品研究
参加者全員で話し合い、考え合い、学び合い、その教材について読みを深めていく集団研究の場です。担当サークル・担当者が話題・問題提供いたします。
☆特別報告
今年も山口 隆さんに報告をしていただきます。子どもたち、私たちをとりまく教育政策は、どんな状況にあるのか、その特徴と私たちの課題を明らかにしていただきます。
日本国憲法 第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
「教え子を戦場に送らない」この思いつよくつよく、わたしたちは平和憲法を守ります。
大阪はぐるま研究会
『学びなおしの部落問題』刊行から3年。その後、法務省の「依命通知」や「部落差別の実態に係る調査結果報告書」(いわゆる6条調査報告書)などがだされましたが、同書で提起したことを裏付けるものとなっています。新学習指導要領にもとづく中学校、高校の新教科書の検定、採択など、前著刊行後の動きをもりこみました。
(『続・学びなおしの部落問題』は書店では扱っていません。直接、大阪教育文化センターに注文してください。)
頒価500円 2022.3.3.発行 A5版/並製/92ページ
1 教育で新しい差別を生むことのないように
2 中学校社会科「歴史」「公民」教科書(2021年度から使用)の検討
3 高校「歴史総合」教科書(2022年度から使用)の検討
4 高校「公共」教科書(2022年度から使用)の検討
5 資料
(1) NHK大阪放送局の度重なる偏向報道―『バリバラ』にふれて(民権連)
(2) 民権連通信号外2021年6月府教育庁交渉
(3) 大阪府人権局「旧同和対策事業対象地域の課題について」(抜粋概要)
(4) 法務省「インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立
件及び処理について(依命通知)」2018年12月27日(抜粋)
(5) 法務省「部落差別の実態に係る調査結果報告書」2020年6月(6条調
査報告書)(抜粋)
(6) 部落差別の解消の推進に関する法律および附帯決議
➜ 『黒い蝶』 松谷みよ子作(文学読本「はぐるま」8巻 1973年)(B4版pdf)
➜ 大阪はぐるま研究会新春学習会への参加申し込みはこちら(Googleフォーム)
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(サテライト会場-泉南方面-での視聴・参加を希望される場合もGoogleフォームから連絡ください。)
ただいま『記録集』を作成中です。
全国水平社創立100周年記念講演会へのご参加ありがとうございました。(写真は「しんぶん赤旗」2022.4.12.)
全国水平社創立100周年記念講演会 ➜ 案内チラシ(カラーPDF)
全国水平社創立100周年記念講演会
部落問題と その解決を考える
○日時 2022年4月10日(日)午後1時30分~4時30分
○会場 たかつガーデン(大阪府教育会館) 近鉄「上本町」、地下鉄「谷町9丁目」
■講演1(歴史)講師 広川禎秀さん(大阪市立大学名誉教授・部落問題研究所理事)
■講演2(現状)講師 谷口正暁さん(民主主義と人権を守る府民連合 執行委員長)
○参加費 500円
○主催 大阪教育文化センター「部落問題解決と教育」研究会
大阪歴史教育者協議会
大阪はぐるま研究会
○後援 大阪歴史科学協議会
○マスク着用、参加者の連絡先確認など感染対策にご協力ください。
感染拡大など状況による変更があれば「部落問題解決と教育」研究会HP(人権教育事典)や 大阪歴史教育者協議会HPでお知らせします。
□連絡先 大阪教育文化センター TEL 06-6768-5773
メール mail@jinken-kyoiku.org
参考
「部落問題解決と教育」研究会HP(人権教育事典)
https://jinken-kyoiku.org/
大阪歴史教育者協議会HP
https://osaka-rekkyo.org/
第46回 大阪はぐるま研究集会 ご案内
主催 大阪はぐるま研究会
➜ この案内のダウンロードはこちら(PDF)
1.期日 2021年8月7日(土)
2.会場アネックスパル法円坂(大阪市立教育会館)
地下鉄「谷町四丁目」・JR「森ノ宮」徒歩6分
3.日程
9:30 受付
9:50 分科会(5分科会)
12:30 昼食休憩
13:30 全体会(詩の朗読・特別報告・記念講演)~17:00
1.詩の朗読
2.サークル紹介
3.特別報告
4.記念講演
令丈ヒロ子さん プロフィール
1964年大阪生まれ。嵯峨美術大学客員教授。成安造形大学客員教授。1990年に『ぽよよんのみ』でデビュー。代表作『若おかみは小学生』シリーズは累計300万部のベストセラーに、『料理少年Kタロー』は2度テレビドラマ化された。『パンプキン!模擬原爆の夏』他多数。
8月7日(土)午前9:50~12:30
■物語文
◆【お手紙】(アーノルド・ロベール 作)
(教育出版1年・光村図書2年・東京書籍2年)
一度も手紙をもらったことのないがま君の悲しみを知り、自分のこととして受け止め、がま君と一緒になって悲しむかえる君。がまくんを喜ばせるために、ないしょでお手紙を書いて、かたつむり君に託すが、足の遅いかたつむり君に託したために、なかなか手紙がとどかない。しかし、かえる君の行為を知ったがま君は、とても幸せな気持ちになる。そして、かえる君も同時に幸せを感じる。相手とともに喜び、ともに悲しむ登場人物の心情を読んでいきます。
[泉南はぐるま研究会]
◆【ごんぎつね】(新美南吉 作)
(教育出版4年・光村図書4年・東京書籍4年・学校図書4年)
『ごんぎつね』は、小ぎつねごんの人物像や気持ちの変化がきめ細かく書かれていますいたずらばかりのごんがつぐないをする中で、どんどん兵十に気持ちを寄せていきます。悲しい結末に終わってしまう物語ですが、ごんの心情を丁寧に読み合いたいです。
[羽曳野はぐるま研究会]
◆【やまなし】(宮沢賢治 作)(光村図書6年)
『やまなし』は難解な教材です。難解だからおもしろい、とも言えます。言葉や文をもとに、読み手が感じたこと、思ったことを語り合うことで、読みを深めていきたいです。宮沢賢治の初期稿では、〈五月〉と〈十一月〉でした。このことも読み深めに活かします。
[箕面はぐるま研究会]
◆人権と社会科
-教育で新しい差別を生むことのないように-
新しい差別を生む「部落問題学習」。
学校では、理由があるとなかろうと人間を差別してはいけないということをあらゆる場面を通して子ども自身のものにすることが基本です。部落問題の解決はシンプル。同じ日本人として普通につきあうこと。先祖が何とか、どこの出身とか、気にしない人間関係が当たり前。先祖や特定の地域に関心を育てる教育は新しい差別を生む。
「部落」なんてありません。行政の調査結果に学びましょう。
[柏木 功・人権と社会科研究サークル]
◆生活綴方と学級づくり
『子どもの声を聴く』
一人ひとりの子どもを大切にしたい。コロナ禍の今、子どもたちが何を思い、何に心寄せているのか。子どものつぶやきや日記、作文から一人ひとりの子どもの声を聴きたいです。
[泉南はぐるま研究会]
「模擬原爆」に出会ったところから、「パンプキン!」を書くに至った経緯、書いてからどんな反響があったか、文庫化の際にどう手入れを入れたか、をメインにします。古典のほうは特に資料はないのですが、曽根崎心中愛好者たちと、心中ルートを歩くツアーに参加したり、近松など関係者のお墓参りに行ったことなど、「曽根崎心中」にまつわる話もお話していただきます。
箕面はぐるま研究会
羽曳野はぐるま研究会
和泉どの子も伸びるサークルたんぽぽ
泉南はぐるま研究会
人権と社会科研究サークル
1.参加費 2000円(学生は1000円)
2.申し込み当日参加の方、本部受付でお願い致します。
なお、従来通りハガキ・Fax・E-mail・電話等での参加申し込みも受け付けます。その場合も本部で受付をお願い致します。
事前申し込みの際は、
①氏名 ②郵便番号、自宅住所・電話番号 ③勤務先 ④参加希望分科会をご記入ください。
⑤締め切り 7月25日(日)
3.申し込み・問い合わせ先
〒 590-0423 泉南郡熊取町自由が丘2-15-13 辻まち子
E-Mail machiko-tsuji◎ares.eonet.ne.jp ←◎は@に変えて下さい。
Tel&Fax 072-453-5214
4.緊急事態宣言が出されている場合は、中止とさせていただきます。
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☆分科会
参加者全員で話し合い、考え合い、学び合い、その教材について読みを深めていく集団研究の場です。担当サークル・担当者が話題・問題提供いたします。
☆特別報告
今年も山口隆さんに報告をしていただきます。昨年来のコロナ禍で大きな影響を受けた教育現場。急速に進行したオンラインの授業化によって、教育とは何か、学校のあり方、教師の役割等を根本から問い直される事態になっています。私たち教師の課題、進むべき道筋について示唆をいただきます。
日本国憲法 第二章 戦争の放棄
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
「教え子を戦場に送らない」この思いつよくつよく、わたしたちは平和憲法を守ります。
大阪はぐるま研究会
原告ら(八鹿高校教職員)の側に非難さるべき落度は認められない
八鹿高校事件は、解同の拉致、13時間に及ぶ暴行により、教職員56人が重軽傷うち29人が入院治療を受けた事件。県や県教委、校長、警察など加担のもとに起こった事件であった。
八鹿高校教職員61名は、兵庫県と県教委職員ら、警察署長および解同幹部2名を被告としての損害賠償裁判で、総額1億400万円の慰謝料を請求した。
1982年3月、裁判所の和解勧告により、兵庫県は5700万円余りを支払うという和解が成立した。この和解には、さらに、兵庫県の同和行政、同和教育について、当時の解同との連帯、密約の誤りとその後それを手直ししたことを明らかにするため、双方代理人の問で覚え書きを作成するという項目もあった。
この和解勧告を拒否した解同幹部に対する判決は合計3000万円の慰謝料の支払いを命じた。
大阪高裁1992.7.24、最高裁判決1996.2.8.で確定。(以下は神戸地裁判決の抜粋)
一、主文
被告らは連帯して、原告らに対し、損害賠償として合計約三〇〇〇万円と、事件後(約一五年)の年五分の遅延利息を支払え。
二、理由
1、いわゆる八鹿高校事件(暴行、傷害、監禁、強要など)は、その動機、態様、結果いずれをみても、現行法秩序の到底許容し得ない違法行為である。
2、被告両名は共に、右事件を惹き起こした最高指導者としての民事責任を免れない。
3、右事件の発生につき、原告ら(八鹿高校教職員)の側に非難さるべき落度は認められない。
(判決の一部抜粋)
六 被告らの仮定抗弁に対する判断
1 正当行為
(一) 被告らは、解放同盟員らによる本件行為は原告ら八鹿高校教職員の差別行為に対する糾弾であるとし、被差別部落民には糾弾権があること、八鹿高校の同和教育は差別教育であったこと、また、原告らがあくまで解放研を承認せず、解放研生徒との話合いを拒否して集団下校したことは、被差別部落民に対する差別行為であったから、本件程度の糾弾は正当行為として容認される筈である旨主張する。 しかし、被告ら主張の糾弾権なるものは実定法上何ら根拠のないものであるばかりか、八鹿高校の同和教育についても、その概要は前認定(二の3の項)のとおりであり、これによれば同校の同和教育は、本件当時、高等学校の教育課程としてみれば、一応の取組みができていたものと評価することができ、少なくとも部落差別を温存助長するような差別教育でなかったことは明らかである。
以下、前認定の事実関係に基づいて判断する。
(二) 解放研の不承認について
解放研は、連合解放研の規約及び闘争方針からも明らかなように、教師は「社会観念にまでなっている差別観念に毒されきって」おり、また「必死に同和教育に取り組んで」いないため、その行う同和教育も、結局、部落の生徒を苦しめているだけにすぎず、単に部落差別を温存助長する結果となっているとし、このような教師の人間性、同和教育に対する姿勢を正し、真の解放教育を確立するため、教師に対する確認会、糾弾会を実施することを目的の一つに掲げ、具体的な闘いを進める時は、常に解放同盟と連帯し、その指導を受けることが義務づけられている。
したがって、解放研は、学校内の機構上はクラブ又は同好会の一つとして位置づけざるをえないものの、活動面では教師の差別性を論じ、教師を糾弾の対象にすることを目的とするものであるから、人間的な触れ合いと全人格的な結びつきを基盤として、教える者と教えられる者との間に良好な教育的秩序の維持が必要な学校教育において、その全てを根底から破壊しかねない重大な危険性を帯有しているのみならず、指導面でも、教師の指導を排除して、教育現場において関係者の総学習、総点検の実施を要求する解放同盟の指導を至上のものとしており、運動体的色彩の濃い生徒の集団であって、本来教師の指導、助言の下に学習活動をなすべきクラブ又は同好会とは全く異質のものであった。和田山商業高等学校や朝来中学校の例をみても、解放研生徒は、およそ差別事象とは認め難い教師の些細な言動を取り上げ一方的に差別行為と断定し、教師の差別性を追及すると称して確認、糾弾会に持ち込んだうえ、解放同盟の指導、支援を受けながら、教師を罵倒して吊し上げ無条件の屈服を迫っているのであって、解放研が学校教育における正常な教育的秩序と根本的に相容れない性格を持っていたことは明らかであった。
一方、解放同盟中央本部は、職場、学園に解放研を組織することを昭和四九年度の運動方針に掲げ、これを受けるかのように南但馬でも六月二二、二三日の一泊研修会から九月八日の連合解放研結成の前後にかけて、殆んどの高等学校に解放研が作られた。八鹿高校の解放研も、その設立に至る過程において被告丸尾ら解放同盟側の強力なてこ入れがあり、また当時同和教育は解放同盟と連帯して推進していくことを標榜していた県教委の強い指導もあったため、珍坂校長も止むなく同好会設立に関する規約や手続を無視し、職員会議の反対を押し切って設立を承認したもので、他の同好会には許されない部室まで与えられるなど別格の扱いを受け、他の生徒達から抗議の声が挙がるほどであった。
このような解放研の性格と実態を冷静かつ客観的に考察すれば、真剣に学校教育のあり方を考える者であれば誰しも、学校内での解放研を承認することには消極的にならざるをえない筈であり、したがって、原告ら八鹿高校の教職員が何度も職員会議を開いて慎重に検討を重ねつつ、終始一貫して解放研の設立に反対し、校長が設置に踏み切った後も不承認の態度を変えようとしなかったことには十分に理解できるものがあり、これをもって差別行為と非難される理由はないというべきである。
(三) 解放研生徒との話合い拒否について
八鹿高校の解放研の生徒たちは、一一月一八日三項目の要求を掲げて座込みに入った。その要求の内容は「(一)八鹿高校解放研の顧問をさらに三名つけること(但し、人選は解放研の希望を受け入れること)、(二)八鹿高校解放研と先生との話合いを持つこと(但し、連合解放研並びに解放同盟の各役員を含むこと)、(三)現在、八鹿高校の同和教育は部落の解放と全ての生徒の幸せにつながっていないことを認めること」というものであり、第一、二項目では、教師側が八鹿高校の解放研を承認することを前提にし、話合いには連合解放研と解放同盟の役員が同席することを条件とするものであった。しかし、原告ら八鹿高校の教職員は、解放研が解放同盟の下部組織ともいうべき性格と実態を持ち、他校の解放研の例からも学校教育とは相容れないものとの判断から、終始その設立に反対する姿勢を貫いていたのであるから、原告らに解放研の承認を前提とする話合いを期待することにはそもそも無理があったばかりか、解放研生徒が要求する「先生との話合い」も、連合解放研や解放同盟の役員の同席を条件とするものであって、このような話合いが、教育的営為としてなされる通常の先生と生徒との話合いとは全く異質のもので、教師を糾弾の対象とし、そのまま確認会、糾弾会に発展しかねない内実のものであったことは、他校の実例からも明らかであった。 解放同盟という運動団体の指導と支援を背景に教師を糾弾の対象としか考えない解放研生徒に対しては、自校の教師といえども、もはや教育的営為を行うことは極めて困難な状態に立ち至っていたのである。第三項目にしても、これを認めることは、地道で多面的かつ積極的な活動を展開してきた八鹿高校の過去の同和教育及びその成果を全て否定し去ることにつながるものであり、原告らが容易に応じるとは到底考えられないものであった。
右の諸事実に、本件当日までの事態の進展(解放研生徒は要求貫徹を図るためハンガーストライキに突入し、これを外部から支援する解放同盟の動きは一層激しさを増していたことなど)を併せて考えると、原告ら八鹿高校教職員が、解放研生徒の求める「話合い」に教育的価値を認めず、かえって場合によっては確認会、糾弾会に持ち込まれ、八鹿高校の教育の自主性、主体性を損いかねない最悪の事態になることを懸念して、これを拒否したことにはそれなりの理由があり、原告らのこのような対応を差別行為として非難することはできないというべきである。
(四) 原告らの集団下校について
原告らは、八鹿高校事件発生の当日(二二日)、登校後直ちに集団下校した。これは、諸般の状況から、原告ら八鹿高校教職員に対する解放同盟の糾弾が誰の目から見ても当日必至の情勢であり、ひと度解放同盟の糾弾を許せば、原告らの身体の安全はもとより八鹿高校の教育の自主性、主体性も損われ、八鹿高校は以後、解放同盟に指示されるまま教育を進めていかざるを得なくなると原告らが判断し、そのような事態だけは何としても回避しようとしたためである。原告らの右判断があながち荒唐無稽でなかったことは、本件当日の八鹿高校を取りまく周囲の異様な状況に加えて、南但馬における解放同盟の動向や南但支連協の運動方針(糾弾闘争に関する項参照)、それに何よりも本件当日、被告らに指導された多数の解放同盟員らが原告らに対し執拗かつ凄惨な集団暴行を加え、暴力をもって原告らを無条件に屈服させたうえ、「今後は解放同盟と連帯して部落解放のために闘う。」などの自己批判書を書かさせていることからも明らかである。
したがって、緊急事態に直面した原告らが、自らの身体の安全と八鹿高校の教育の自主性、主体性を守るため、非常手段として集団下校したことには無理からぬものがあり、むしろ緊急避難であったということができる。なるほどハンガーストライキをしている解放研生徒をそのまま校内に放置して集団下校したことには、「自校の生徒の立場を思いやるという教育的配慮に乏しく、教育者として適切さを欠く点があった」とか、「いかにも早急で思いきった態度であり、現にハンガーストライキをしている生徒やその父兄の心情を含め同校全体の教育的見地への配慮を十分かつ慎重に行ったうえのものであるかどうかについても大いに問題となる」旨の指摘も一応できなくはないであろうが、前述の解放研の性格と実態、解放研生徒の要求する「話合い」の内実等を仔細に検討すれば、右の指摘が果して正鵠を射たものかどうか疑問なしとしないのである。
(五) 以上のとおりであり、被告らが主張する原告らの差別行為なるものには、そもそも差別性を見出すことができないのみならず、被告らの本件行為は、その動機、態様、結果のいずれをみても現行法秩序の到底許容し得ないものであるから、正当行為の主張は理由がなく、採用できない。
2 過失相殺
被告らは、本件の発生には、原告ら八鹿高校教職員が解放研をあくまで承認せず、解放研生徒との話合いを拒否して、ハンガーストライキをしている解放研生徒をそのまま校内に放置して集団下校するという、教育者として適切さを欠いた行為にも原因があり、責任の一端は原告らにもあるから、過失相殺すべきであると主張する。
しかし、これに対する当裁判所の判断は既に説示したとおりであり、原告らのとった措置はいずれも無理からぬもので、そこに落度はなく、教育者として適切さを欠いたとの非難は当を得たものではない。
被告らの過失相殺の主張も採用できない。
七 損害額
1 慰謝料の算定
本件は、解放研をあくまで承認せず解放研生徒との話合いを拒否する原告ら八鹿高校教職員に対し、被告両名に指導された南但馬の解放同盟が、共闘会議に名を籍りて差別者の汚名を着せ、徹底した私的制裁を加えて解放同盟に対する無条件の屈服を迫った事案であり、その態様は、白昼公道で原告らに襲いかかり集団暴行を加えて校内に連れ戻したうえ長時間にわたって校内各所に監禁し、その間執拗かつ凄惨な暴行、脅迫、傷害を加えた挙句、原告らにその意思に反して自己批判書を書かせたというものであって、本件不法行為は動機、態様、結果等のいずれをみても極めて悪質といわざるをえない。
したがって、慰謝料の算定にあたっては、右の本件事案の特殊性を基本に据えたうえ、原告らには、非難さるべき落度はないこと、被告らは、本件発生後今日に至るまで、原告らに対し何ら慰謝の方法を講じていないこと等をも斟酌しつつ、各原告毎に暴行脅迫の態様、傷害の有無、程度、入通院の期間、後遺症の有無、程度、監禁されたかどうか、その時間、自己批判書等の作成(強要)の有無の各項目を個別に検討し、その結果別表第八(慰謝料額算定一覧表)記載のとおり各慰謝料額を定めることが、原告らの精神的肉体的苦痛を慰謝するのに相当であると認めた。
なお、同表記載の「加算金」は、本件不法行為の態様に照らし、個々の右各項目では賄うことのできないもの、例えば原告らが一様に味わったであろういい知れぬ屈辱感や暴力で屈服させられたことの無念さ、明日からの学校教育に対する不安、これらを増幅した本件不法行為の強度の不当性などを考慮し、補完的機能を持たせたものである。