2分でわかる 部落問題と教育 (2016年版)

「2分で分かる部落問題解決と教育」のダウンロードはこちら(A4版1枚)(PDF)

1.部落問題とは

 江戸時代までの日本の社会は身分をもとにする社会でした。明治以後の日本の近代化の中でも、地域社会の中では江戸時代の賤民身分につながりがあるとされた一部の地域が社会的差別を受けていました。
 封建時代の残りものが「部落問題」です。

2.部落問題はどこまで解決したか

 戦後、日本国憲法の成立と民主主義的意識の高まりのもと、1969年から始まった同和対策事業は国地方自治体あわせて15兆円が投入され、高度経済成長とともに地域の状況を一変しました。

 2002年、特別法の失効とともに同和対策事業は終了しました。2016_01_28_2funde

 劣悪な地域の環境は改善され、「部落」と呼ばれた集落の景観もなくなり、周辺地域との分別もできなくなりました。教育や就職・結婚も改善され、居住する人々の入れ替わりも激しく、誰が従来からの居住者か、誰がそうでないかも分からなくなりました。国民の意識も大きく変化し、もはや、日常の暮らしの中に部落問題はありません。

 大阪府教委も「誰が地区の人か、誰も説明できない」「今はもう被差別部落なんてないよという」と説明しています。

 生活困難が集積した地域は特別措置法対象地域の5倍もあることが府の調査で明らかになっています。今日の課題は格差と貧困であり、部落問題はもはや過去の問題です。

3.部落問題の解決とは

 社会や人間関係で、出自を意識しない、そんなこと関係ないわ、という状態になることが部落問題の解決です。まだ誤解や偏見を持つ人がいるにしても、「江戸時代につながる話なんて、そんな昔のことを今更何なの」「何の関係あるの」「そんなことで人をみたらあかんやろ」と周りの人はたしなめます。誤解や偏見は社会として受け入れられることはもうありません。

4.学校が教えるマイナスイメージ

 今日では同和問題を「学校の授業で知った」というのが40代以下では過半数です。その結果、「学習経験を積むほど、『就職差別や結婚差別は将来もなくすことは難しい』という悲観的な意識が広がった」と報告されています(大阪府民意識調査2010年)。

 同和対策事業を終わらせた理由の1つに、行政が特別対策を続ける限り、「あそこは特別」という市民の意識が続くということがあります。学校教育も同じではないでしょうか。「部落問題学習」をする学校では「差別は今もある」というだけで、部落問題は解決に進んできたという希望ある事実を教えていません。

5.憲法と自治の力を子どもたちのものに

 「人は尊重すべきもの」「人は協同して生きるもの」ということを子どもたちが自分で理解していくように工夫しましょう。学校では「部落」や「同和」という言葉を使わないで指導することが大切です。
 よく「将来、部落問題に出会った時のために」教えておかないと、と説明されることがあります。一見、まともに見えますが、逆に言えば、将来、学校では全く扱っていなかった問題に直面した子どもはお手上げになってしまうということでしょうか。いつまでもいつまでも学校で部落問題を教え続けるのでしょうか。「人は尊重すべきもの」「人は協同して生きるもの」という立場で考え行動できる子であれば、さまざまな問題に直面した時に適切に判断できることでしょう。

 大阪府民意識調査(2010年)も「『同和問題は知らない』という人の人権意識が低いわけでもありません。」としています。「人権教育」というなら、憲法と自治の力を子どもたちのものにすることではないでしょうか。