いわゆる「差別落書き」問題について
1983年6月 大阪府部落解放運動連合会 (全解連)
最近、「差別落書き」事件が多発しています。
主に、「部落解放同盟」やその関連団体の手で摘発され、「落書き」の対象となった施設や場所の設置者や管理者が「差別」の「確認」や「糾弾」の当事者となり、「反省」を迫られ、なかには、一部郵政の職場のように、「同和研修」の実施をはじめ「解放研」の事務所設置、活動家の勤務解除などを当局に認めさせるという異常な事態も起こっています。また、教育の現場では、校区や校内で判明した「差別落書き」を”教材”にした「指導」が子どもたちに行なわれています。
全解連は、こうした動きに深い憂慮をいだいています。以下この問題に対する私たちの考え方と運動のすすめ方をのべます。(*1)
1.「落書き」とは
「落書き」とは、「書くべきでない所に文字や絵をいたずら書きすること」で、そのほとんどが書いた者を特定することができません。
多くの人たちが利用する公共物や一般の目にふれる所への「落書き」は内容、形態のいかんにかかわらず禁じられているのは社会的常識になっています。
一般にこうした「落書き」は、消去もしくは施設や対象を以前の状態に復元することで基本的に解決するものです。
いわゆる「差別落書き」もその例外ではありません。
2.なぜおこるか
公表されている「差別落書き」は、どれひとつとっても許しがたい、国民融合を敵視した悪意に満ちた内容になっているのが最近の特徴です。 こうした「落書き」の背景には、
①部落問題にたいする歴史的、科学的な理解の不十分さや基本的人権への無知や認識の欠除
②長年にわたって解同一部幹部らによって持ちこまれた部落解放運動の弱点
③不公正や逆差別を生み出した同和行政のゆがみ
……が横たわっています。
これらを解消することなしに「落書き」問題の真の解決はありえません。
3.「差別落書き」への対処と全解連の運動のすすめ方
国民的融合の促進と「21世紀に部落差別を持ち越さない」決意のもとに運動をすすめている全解連は、「差別落書き」をことさら重大な差別事件として扱うことに反対します。
実行行為者も不明な「落書き」をとらえて「部落排外主義」や独断的な「差別論」に結びつけてキャンペーンし、「組織強化」や利権獲得の道具にするなどは、部落差別解消とは無縁のものです。
まして、一部郵政の職場でおこっているような異常な事態は一刻も放置することができません。
また、軽薄で打撃的なことばが並んだ「落書き」を”教材”にして児童・生徒を「指導する」(□□小学校)などは、およそ教育と呼べるものではありません。
〈具体的には〉
全解連は今日まで、真の部落解放をめざす運動の先頭に立ってきました。
施行2年目を迎えた、「地域改善対策特別措置法」(地対法)も、そうした私たちの運動を反映して「周辺地域との一体性の確保」や「公正な運営」「広く国民の理解と協力を得る」(地対法施行にあたっての次官通達)ことを明記しています。
こうした法の精神を生かして、公共施設の公正な使用や周辺地域への開放をはじめ、”差別の垣根”をとりはらう具体的な措置を一日も早く実現して、住民相互の連帯・国民的融合をさらにすすめることが、「差別落書き」を生み出さない条件をつくる道です。
また、部落差別の解消にとって、旺盛な啓発活動は不可欠ですが、その主体は、私たち自身が担わねばなりません。多くの府民を対象にした啓蒙・啓発が”上からのおしつけ”でなく、理解と共感を広げる運動として、生活や文化を含めた交流を基礎にとりくみを強めることが大切です。
(1)すべての府民を対象に、部落問題の科学的認識や「国民融合論」の啓蒙・普及活動を強力にすすめます。
(2)法務省や地方自治体、公共団体と協力・共同して正しい人権啓発運動をすすめます。
(3)「差別落書き」事件を口実に利権をあさったり、それをとらえてゆがんだ教育をするなどの動きにたいしては、断固としてたたかいます。
(*1) 1983年10月に「再び『差別落書き』問題について」を発表している
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