大阪市同和教育基本方針

第1ボタンのかけまちがい

 大阪市同和教育基本方針 「教育の中立性確保」を削除 「地域との連携」と差し替え

(柏木功 2006年)

 飛鳥会事件など同和対策事業をめぐる利権や行政との関係がようやく報道されるようになった。教育委員会も副読本「にんげん」や図書を一括買い上げし学校へ押しつけてきた。そのルーツは1966年の「大阪市同和教育基本方針」にある。

 大阪市教育委員会は、同和対策審議会答申の翌年、1966年に同和教育基本方針の制定に着手した。

 その理由は(1)同対審答申に示された「指導方針の確立」 (2)部落解放運動をすすめる人々から求められた (3)全同教大会が大阪で開催その影響などがあるとする(教育センターの研究紀要参照)。市教委に「同和教育企画委員会」が設置され基本方針の草案が検討された。

 6月の第1次草案では、最後に「教育の中立性」について3行書かれていたようだ。

 7月2日の第2次草案でも「教育の中立性」は書き込まれていた。これに対して「市民的権利は…たたかってえたものである。教育の中立論は分断させるもの」という主張が出された。

 21日の第3次草案では「教育の中立性」云々は削除され「地域関係諸機関ならびに諸団体との連絡を密に」と改められた。

 11月18日制定された基本方針では「連絡を密に」が「連携を密に」とさらに変えられた。

 同対審答申にも書かれ、以後の国の文書でも必ず「教育の中立性確保」が書かれているにもかかわらず、大阪市では「同和教育基本方針」策定の段階で、「教育の中立性」が削除され地域諸団体との「連携を密に」と書き込まれた。

 第1ボタンのかけ間違いである。それが何をもたらしたか、教育委員会所管の解放会館館長と当時の解同飛鳥支部長小西被告との関係がよくしめしている。

 今日においても、校区に解放同盟支部がある学校に転勤した教員は「新転任同和研修」として解放会館(今は「人権文化センター」)へ研修に行かされているのではないだろうか。


大阪市同和教育基本方針

昭和41年(1966年)11月

 日本国憲法においては、すべて国民は法の下に平等であり、その基本的人権はなにびとも侵すことのできない権利として保障されているにもかかわらず、同和地区においては今日なお社会的・経済的・文化的に低位性をよぎなくされ、現代社会の不合理と矛盾を集中的にうけ、差別はなお解消さていない。

 とくに大阪市では人口の移動・戦災・疎開・都市計画にもとづく地域の変ぼうなどにより、同和地区の不明確化とスラム化の傾向がみられ、いわゆる都市部落の特徴を呈し、問題の解決をいっそう複雑にしている。

 部落の解放については、今なお一部ではことなかれ主義の意見もあとをたたず、融和主義や同情主義も根づよく残っている。このような表面的・現象的な認識では、現に存在するきびしい部落差別の解消は期しがたい。

 部落差別の解消はすべての国民がこの差別の実態を直視して部落問題を正しく認識し、民主主義をより具体的に実現する願いを基調として積極的にこれととりくみ、あらゆる力の結集・統合の上で実現するものであるが、その根本においては教育の力にまつべきところが多い。

 同和教育の本質は、今なお部落差別の存在することの不合理を知らせ、人間尊重の自覚を高め、不合理な差別を排除する精神をつちかうことにある。とくに同和地区の児童・生徒に対しては、学力の向上をはかり、人権の自覚を高め、いささか の差別をも許さず、差別を克服し、民主社会の一員としてその責務をじゅうぶん果たし得る人間を育成しなければならない。

1.日本国憲法・教育基本法ならびこ児童憲章の精神にのっとり、同和教育をすべての学校・幼稚園および地域社会において国民の責務として積極的に実践展開する。

2.学校教育では、児童・生徒の発達段階を考え、地域の実情に即しながら適切な指導方針を確立し、これを積極的・具体的に展開して同和教育本来の目的達成につとめる。

3.同和地区の子どもは、不就学・長欠・年少労働などの悪条件のもとにおかれ、学習意欲は低く学力などにおいてその発達がじゅうぶんでないきらいがある。この実態の上にたち、教育諸条件の整備をはかり、ひとりひとりの児童・生徒をみつめて、かれらのもつ可能性を最夫限にのばすように努めるとともに、進路指導をいっそう積極的におこなう。

4.部落の現実の問題を適確に把握し、その問題点を解決するため社会教育においては、さらに諸条件の整備をはかり、きびしい生活現実に対し積極的にとりくむ自主的・組織的教育活動の醸成につとめる。

5.同和教育の成果は、指導者の部落問題に対する正しい認識と理解・人間尊重の信念と情熱に負うところが少なくない。したがって指導者の育成とその資質の向上に努力する。

 本方針実施にあたっては、学校教育・社会教育の有機的な連携をはからなければならないことはいうまでもないが、さらに地域関係機関ならびに諸団体との連携を密にし、各種行政と相まってその実をあげることを期するものである。