大阪市内で戦争平和を考える大阪市内で戦争平和を考える

愛国心を問う  戦争中の「国史」テス

 戦争中の大阪市内の小学校ではこんなテストが行われていました。日本がよい国であり、中国やアジアへの侵略戦争を「聖戦」とし、「愛国の精神」を求めています。「国史」の内容が戦争をすすめる心を育てる教育であったことがわかります。

 今、教育基本法に「愛国心」をもちこもうと一部の人が提案しています。ふたたびこんなテストを学校でするような日本にしていいのでしょうか。

  このテスト用紙は、港戦争展実行委員会に市民の方から提供され、1988年の第8回港戦争展で展示されました。当時、中学入試は「国史」のみだったので、居残り特訓されたそうです。

戦争中のテストと子どもの意識

 大阪市立市岡第三尋常小学校の「国史」第七回試験答案
     (1940(昭和15)年)     (現代仮名づかいに変えました)

黒太字はテスト問題
黒字は当時の6年生が書いた答案 
赤字は先生の書き込み
(図版は後につけています)

第7回 その1(時間 その1,その2合わせて50分)

問1 今我が国は非常時だと言っていますがなぜでしょう

答 国防上から見て日支事変が全くおさまらず近く軍備制限の問題があり経済や外交の方面からもいろいろの問題があり様々の違った考えなどを持つ者などもあって、我が国にとって少しもゆだんのすることの出来ない時であるから。

問2 此の非常時はどうした時に終わるでしょう

答 全く東洋の平和が出来上がり、僕らが大人になって実に日満支が一体となって経済も三国が助けあいうめ合わせ東洋人が本当に明るい清い考え持つようになった時に始(初)め(て)此の非常時が終わるのです。

問3 外でも今戦争をしている国がありますか

答 あります

(イ)どこの国と、どこの国ですか

答 ドイツ対イギリス・フランスと又ロシヤ対フィンランドが事変をやっています。

(ロ)日本はどちらに味方をしていますか

答 どちらにも味方をしていません。(中立)

問4 戦争はどういう点がわるいのですか

答 みだりに人を殺し又みだりにお金をつかって一文のとくにもならないものを多くさん作らなければなりません又、人類同志が敵味方にわかれなければなりません。

問5 平和を愛する我が国がなぜ戦争をしているのですか

答 支那の国民政府は我が国が豫てから東洋平和を主義として尽くしているその真意を解せず、排日抗日をとなえ最近はロシアの共産主義をいれて我が国に度々無礼を してきたのでその誤れる考を再三再四反省させたが少しも聞き入れないばかりか我が国に戦を仕掛け東洋の平和をみだしたからです。

問6 今度の支那事変を聖戦(正しいりっぱな戦)といふのはなぜですか。

答 支那の国民政府やその軍を減すことは日本の為ばかりでなく、支那の善良な国民を救うことになり、我が皇恩に浴せしめて東洋平和を築くこととなるからです。

問7 この聖戦の目的をはたすために、国民は次の方面についてどんな覚悟がいりますか。
 (イ)軍事の方面

答 軍事の面ではどんな小さなことでも、どんなところでも話すのをやめて、スパイを防がなければなりません。又、皇軍を慰め、はげまして行かねばなりません。

 (ロ)物資の方面

答 物資を愛護し、節約して、長々と使ひ、なるべく軍用にしてもらいたいと思います。

 (ハ)精神の方面

答 挙国一致して国難にあたらなければならない。益々忠君愛国の精神を強くし、大事な場合は一命をすてて国を守る覚悟がいります。

問8 それについてあなたはどんなにつとめていますか

答 軍隊の出兵などのことは友達にも話さず、鉛筆やノート、ゴムや本などもなるべく大切に使い君臣一体の心を強く持っています。

第7回 その2

問9(イ)あなたは支那人に対してどんな心持でいますか

答 僕らは支那人を導いて正しい道を教えなければならない先生です。それには先ず仲良し互いに手を握って防共に力を尽くさねばならないという心持ちでいます。

(ロ)それはなぜですか

答 此の東洋を明るくする国は日本より外にありませんだから日支一体となって早く赤をのぞき平和なよい国にしなければならないからです。

問10 新聞やニュース映画を見ると、皇軍将兵が支那の子供達を、学校をつくって教育したり、食物をあたえ又養育したり、中には内地につれ帰ったりして、可愛がるのはなぜですか。

答 東洋平和を成し遂げるのには今の支那人ではむずかしいだから今から支那の少国民に日本の正しい考えを教えこんで未来にきっとこの大業を成すため又、支那の小供に日本の風景などを教えて日本をなによりもなつかしい所にさす為です。

問11 あなたは支那の子供に対して
(イ)どんな気持ちをもっていますか。

答 気の毒だなあという気持ちをもっています。

(ロ)どのようにしたいと思いますか。

答 互いに仲良くして早く新支那の建設に加わりたいと思います。

問12
(イ)あなたは支那の子どもたちに比べてどんな点が幸福だと思いますか

答 万世一系の天皇をいただいて我が子のようなお情けをいただいて居ります。そうして又、国民も御親と仰ぎ奉っている又、学制があって僕らは毎日何の心配もなく学校に通っています。又、支那の子供のように毎日働かなくても、かまわないで一生けん命勉強していればよいのです。

(ロ)その幸福をうけられる原因の主なものを言いなさい。

答 国民が皆天皇陛下の御徳をしたい御稜威の本に一生けんめい働いているからです。僕らは親に孝行をつくす事を誇りとして代々の少年が親に孝行をつくしてきたからです。(君民一体)

(ハ)それに対してあなたはそれぞれどうせねばならんと思っていますか。又どうしていますか。

答 いよいよ共同し君臣一体となって此の非常時局をのりこさねばならないと思っています。なるべく何でも節約し一生けんめい勉強をしよく家のお手伝いもしています。

問13 日本と支那と満州と、これからどのようにして行かねばなりませんか。又、それをするにはどうしたらよいと思いますか。

答 日満支が一体となって防共につとめ早く明るい東洋を建設するようにつとめて行かねばなりません。先ず僕ら少国民が早く仲良しになり大人になって本当に一体とならなければならないと思います。

 

 


案内人 柏木 功

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