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~子らよ、もっともっと幸せに・・・~
『戦火をくぐった唄 三日月センセイと三人の子と』
(西村滋著 講談社刊)

 第二次世界大戦で戦災孤児になった12万人以上の子ども達は、65年経た今高齢になられています。その生き様は戦後生まれの私たちに容易に想像のつくものではありません。

 『戦火をくぐった唄 三日月センセイと三人の子と』(西村滋著 2009年7月 講談社刊)は、私たちに、戦争がもたらしたやるせない悲しみと、生きる意味を問いかけています。

 「生半可のヒューマニズムでは、戦災孤児特有の思考には、歯がたたなかった」と語る著者の西村滋さんは現在84歳、少年期を孤児として壮絶な放浪生活を繰り返しながら生き抜き、戦後は戦災孤児と共に生活をするなかで、以来戦災孤児に関わり続けられている作家です。

 “黒いベレー帽のおじいさんは、養護施設の子ども達の歌う「富士山」を聞いて、街に流れる「夕焼け小焼け」のメロディを聞いて、デパートの人形売り場の「うれしいひなまつり」を聞いて、3月10日の東京大空襲で孤児となり養護施設に収容されたフー公、アキラ、アイちゃんのことを思い出します。彼らが親を必死で捜し求めたことを。養護施設の職員・三日月センセイとして関わった自らのことを。三日月センセイは、彼らの行動を通して、一人で生きていかねばならなかった子どものために残した親のプレゼント(厳しい現実を生きてゆくために欠かせないパートナーとロマンチシズム、忍耐心とプライド、平和を希求するつよい心)こそが生きていく支え・力となっていることを知ります。” 

 戦争孤児と共に生きた体験をもつ三日月おじいさんは、今や家があり親がいるのにひとりぼっちにされている「ローン孤児」を目にして、思うのです。

 「せっかく戦争のない日本に生きているのだからもっともっと幸せになってくれてもいいんじゃないか?こどもの権利や尊厳を奪っていたのは、戦争なのだ。こどもは、もっともっとこどもらしく自由に、たのしく、元気に生きてもいいのだよ」と。

☆すべての大人に、子どもたちに、お薦めしたい平和への思いと願いがあふれる一冊です。

講談社社
戦火をくぐった唄 三日月センセイと三人の子と

【著作】西村滋/作
【ISBN】978-4-06-215631-8
【判型】四六判
【価格】1,260円
【発売日】2009年07月

 潮見 典子  2010年

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