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愛するもののにおいを……「マヤの一生」

 椋鳩十といえば「大造じいさんとがん」。全国、の小学校五年生が学習します。大造じいさんと残雪の知恵比べ。仲間を助ける残雪の堂々とした姿に心うたれる大造じいさん。子どもたちの好きな作品です。椋鳩十さんは、数多くの動物物語を残してくれました。そのどれもが、動物に対する深い愛情にあふれています。

そのなかでもっともお薦めしたいのが「マヤの一生」です。解説のなかで鳥越信氏は次のように書いています。「動物文学に破り組んで30年、これまでにもすぐれた数々の作品を運んできたこの作者が、どうしても書かずにはいられなかった。しかも戦後二十数年も胸の中にあたため続け、ついに書かずにいられなかった作品こそ、この『マヤの一生』であったにちがいありません」

 マヤは椋さんの家で飼われてた犬です。当時、ニワトリのピピ、ネコのベルとが飼われていて、マヤはそのリーダー的存在。この三つの生き物がともに仲良くくらす様、マヤを中心に三人の子どもたち、椋家との関わりが生き生きと描かれています。動物を広い庭で野性の部分を残しながら飼うことのなくなった現在の子どもには、理解しにくいかもしれません。しかし、椋さんの動物の鋭い観察描写によってマヤの全体像、また椋家にとってマヤの存在の大切さがわかってきます。犬を飼ってはいけないという命令から、いかにマヤの命を守っていくか、理不尽な非国民という名にも耐える三人の子どもたち、戦争というものが奪う人間のやさしさ、掠さんのあたたかい眼差しで描かれていきます。そして、とうとう脳天を棒で殴られてしまうマヤ。「消えようとする命の火をかきたて、かきたて、幼い日からの思い出のわたくしの家に、ようやくのおもいでたどりついたのです。そして、愛する次男のにおいのするげたをみつけ、愛するものの、においをかぎつつ、息をひきとっていったのです」

 椋さんの作品は全集にもなっており、昭和前期から、今なお子どもたちによく読まれています。

大日本図書

子ども図書館
新版 マヤの一生
【著作】椋 鳩十(作)・吉井 忠(画)
【ISBN】I4771759141
【判型】21cm(A5判)/64p ()
【価格】販売価:\1,365(税込) (本体価:\1,300)
【 NDC分類】K913
【発売日】1987年7月31日現在入手不能

マヤの一生 アニメ版

【著作】椋 鳩十 (著) 加藤 伸代 (著) 虫プロダクション
【ISBN】4477006810
【判型】21 x 15(cm)/126p
【価格】¥1,325 (税込)
【発売日】1996/04

ポプラ社

椋鳩十全集 15
マヤの一生 / 椋鳩十/著
【著作】椋鳩十
【ISBN】4-591-00362-0
【判型】 23cm/229P
【価格】(税込) 1,223円
【発売日】1980年2月

埼玉映画文化協会/神山プロダクション/虫プロダクション/鹿児島映画センター

長編アニメーション映画 マヤの一生

【原作】椋鳩十
【監督】神山征二郎
【発売日】1995年

椋鳩十記念館・図書館(長野県下伊那郡喬木村)

 潮見 典子  1999年

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