大阪市内で戦争平和を考える大阪市内で戦争平和を考える

戦争を語りつぐこと

その子は 死んで鳥になったげな
そうして いまがいまも
まちんと まちんとと
なきながら
とんでいるのだと
ほら そこに -
いまも -

 『まちんと』(文・松谷みよ子 絵・司修 偕成社)の最後の部分です。

 各地に伝説をたずねていた松谷さんは、原爆にあった幼子が、口にしたトマトを「まちんと まちんと」(もうちょっと)と言いながら死んでいったという話を聞き、これは現代の戦争を語りつぐ民話だと思い、この本を作ったのです。

 戦争を知らない子どもたちに、戦争を知らない大人が戦争を伝えることって難しいことですね。でも、伝えていかなければと思うのです。そうしなければ、トンでもないことになってしまいそうな気さえします。

一発の原子爆弾が一瞬のうちに町と人々の命を奪ったという事実。幼い子どもたちにも分かる原爆を語りついでいかなくてはならないでしょう。「まちんとまちんと」と言いながら苦しむ幼子の姿、我が子にトマトを食べさせようと焼けただれた体をひきずりながらトマトを求めて探し歩く母の姿。悲しみがあふれてきます。静かさの中に、気迫を感じさせる絵が、いっそう原爆の恐ろしさと失われた幼子の命の悲しみを伝えています。

 平和な今、鳥の鳴き声を耳にしたなら、「まちんとまちんと」と言いながら死んでいった幼子のことを思い出してほしい、という松谷さん、司さんの願いがこめられているようです。

偕成社

■偕成社 絵本
まちんと
【著作】松谷みよ子(まつたに・みよこ)著 司修(つかさ・おさむ)絵
【ISBN】ISBN4-03-438010-1
【判型】25cm×22cm/32ページ
【価格】定価:1260円
【発売日】初版:1978年02月

 潮見 典子  1999年

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