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子どもに伝えたい平和 松谷みよ子の世界

 「わたしの書いてきた道」。先日、組合の教育研究会での松谷みよ子さんの記念講演の演題です。

 1926年生まれの松谷さんは18歳の時に「貝になった子ども」を書き、なんと50年にわたって200冊以上の作品を書き続けてこられました。

 龍になった母をさがして旅をする「龍の子太郎」。この創作民話を、生まれて数ヵ月のわが子に乳をふくませながら書いたというから、すごいではありませんか。だからこそ、たつの苦しみ、生き生きした太郎が書けたそうです。

 全国を歩きまわっての民話探訪。再話の仕事は松谷さんの原点で、その後ずっと続き、ただ民話というだけでなく戦争を現代民話という視点でとらえていらっしゃいます。

 (「戦争と民話」日本民話の会 童心社)直樹とゆう子の兄妹を主人公とした「ふたりのイーダ」(広島の原爆)「私のアンネフランク」(アウシュビッツ)「死の国からのバトン」(公害)「屋根裏部屋の秘密」(七三一部隊)の物語もその中で生まれた作品です。

 また、「ちいさいモモちゃん」から「アカネちゃんのなみだのうみ」までのシリーズは、「子どもと猫に食わしてもらって」と話されましたが、自然に子どもの目線でものごとをとらえていらっしゃる心は、さすが童話作家ならではです。

 わが娘に「どうして家にはパパがいないの?そのお話を書いて」とリクエストされた時、たいへん悩まれたそうです。くつだけが帰ってくるファンタジーになったそうですが、離婚を幼年童話に取り上げたのは松谷さんが最初だそうです。子どもの心を真摯に受け止め、子どもの心の中に真理と感性を見いだす松谷さんの優しさと誠実さに心打たれました。今なお創作への情熱にあふれ、小説をも書かれた松谷さんに本当の若さを感じました。

 「語りは心の母乳。どうぞ子どもたちに本を読んでやってください。戦争の話をしてください。耳をすませば戦争のことを話してくれる人はたくさんいます」と語られ、私たちはおおいに励まされました。

 講演の最後に朗読された「わたしの妹」からは、松谷さんのなりよも生命を大切に思う気持ち、平和を祈る気持ちが伝わってきました。すばらしい作家に出会えました。

講談社

■(子どもの文学傑作選 )
ふたりのイーダ

【著作】松谷みよ子(まつたに・みよこ)著 司修(つかさ・おさむ)絵
【ISBN】ISBN4-06-261155-4
【判型】22cm 210p
【価格】本体1359円
【発売日】初版: 1995.08

■映画 ふたりのイーダ(1976)

【脚本・監督】松山善三
【キャスト】倍賞千恵子 上屋建一 原口祐子 森繁久彌 高峰秀子
【製作年】1976年
【配給】映画「ふたりのイーダ」プロダクション

偕成社

■偕成社文庫
私のアンネ=フランク
【著作】松谷みよ子(まつたに・みよこ)著 司修(つかさ・おさむ)絵
【ISBN】ISBN4-03-652500-X
【判型】B6判/19cm×13cm/302ページ
【価格】735円
【発売日】初版:2005年01月

偕成社

■偕成社文庫
屋根裏部屋の秘密
【著作】松谷みよ子(まつたに・みよこ)著 司修(つかさ・おさむ)絵
【ISBN】ISBN4-03-652530-1
【判型】B6判/19cm×13cm/212ページ
【価格】735円
【発売日】初版:2005年04月

 潮見 典子  1999

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