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日中両国民が人間同士として理解し、結びあう
-赤木由子さんを偲んで-

「あなたのなかにかくされているたくさんの能力をこつこつひきだしながら、太陽のように明るくて、生きる元気のある美人さんになって下さい 赤木田子1986・6・5」

 十年前、赤木由子さんから戴いた娘へのメッセージです。「きのうのわたしにさようなら-姉さんのくれた愛-」赤木由子・作、中山冬児・絵(ポルラ社)の中表紙に書いていただいた今は亡き赤木さんの言葉に胸が熱くなります。再び読み、十年前に赤木さんが語った彼女自身の物語がよみがえってきて、涙してしまいました。

 一年生の時両親を失い兄夫婦にひきとられた満州でのつらい経験。日本人小学校での級友や先生のいじわる。中国人や朝鮮人をひどい目にあわせる日本の軍人。しかし、明るく元気いっぱいの菊は、やさしい心をもってたくましく成長していきます。サルトビサスケの本を読んで、女忍者になるために何日も何日も背中に布をたらして走り続けるエネルギー。おかしいやら、頼もしいやら。結局この忍者修行が戦中戦後の困難をのりこえていく体と精神をつくっていくのです。そしていつも菊を理解し、やさしく励ました姉さんの「とがし・菊」は「世界にただ一人なの」という言葉に支えられて。赤木さんは、中国ですごした少女時代の生活体験から、日中両国民が人間同士として理解し、結びあうための雄大なテーマを「二つの国の物語」三部作(理論社)に十数年をかけて描きました。

 私は児童文学にこんな作品があったのかと一気に読みました。

 赤木さんは、想像していた児童文学作家のイメージとは大違いの気さくなたくましいおばさんという感じの方でした。彼女の口からほとばしり出る話は情熱的でした。若い作家を育てようとされていました。今、生きていらしたら何を思い、どんな作品を書いていらっしゃるでしょうか。

ポプラ社
きのうのわたしにさようなら―姉さんのくれた愛 愛と心のシリーズ

【著作】 赤木 由子 著/山中 冬児 絵
【価格】 ¥924 (税込)

理論社
二つの国の物語
【著作】赤木由子 作
【ISBN】 4-652-04224-8
【判型】 21×16判
【ページ数】 676ページ
【価格】 5,913円 (本体5,631円+税)
【発売日】 1995年

 潮見 典子  1996

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