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『ボクちゃんの戦場』に見る、「いじめ」

松谷みよこさんは、「自分より弱いものをいじめる。自分と同じでないものをゆるさない。そうした差別こそが戦争へつながるのではないでしょうか。」と述べていました。反対に、私は「戦争こそが差別を許し、いじめをうむんだ。」と言いたいと思います。

 子どもたちの「いじめ」の状況、心境をみごとに描いている作品が奥田継夫=作「ボクちゃんの戦場」(理論社)です。ボクちゃんは、正義感があり級長をしている。しかし、体力的に弱いことにコンプレックスをもっている。そんなボクちゃんが自分より弱い小川君をいじめる。「ボクちゃんは小川くんはふてぶてしいのだと思った。ヘンリー君から牧野君の残刃ないじめ方をきいて、そのやり方を非難したボクちゃんは、今、一匹の小悪魔にみいられ、小川君をいじめた。<どうだ?源久志。牧野が人をいじめる心が少しわかったか?誰にも知られないで、自分より弱い者をいじめる気分は壮快だろう。>

 「奥田継夫さんの集団疎開の絵本「お母ちゃん、お母ちゃん、むかえにきて」梶山俊夫・え(小峰書店)には、次のような場面があります。「ぼくはいじめられた。べんきょうがよくできるといってはいじめられ、ねしょんべんをしたといってはいじめられ、かおのあらいかたがサルににているといってはいじめられ、ふとんをあげるのがおそいといってはいじめられた。ぼくもよわいやつをいじめたが、だんだんしゅうだんそかいがいやになってきた。とうとう--。」奥田さんは「集団疎開は、戦争が子どもにもたらした地獄だったが、その中にもう一つ、子ども自身の性格や人間性に根ざす戦場があった。しと述べています。

 今日、違った形での戦場が子どもたちに大きくのしかかっているのではないでしょうか。「いじめ」の背景を、そしてボクちゃんたちがどう生きぬいていったかを、この本は教えてくれます。

ポプラ社
奥田継夫ベストコレクション ( 1 )
ボクちゃんの戦場
奥田継夫 ・著
小学上級~中学生向
定価: 1890 円(本体:1800 円)

(刊行当初は 奥田継夫・作  しらい みのる・絵 理論社 1969)

小峰書店 1985/03出版 えほんセレクション
お母ちゃんお母ちゃーんむかえにきて
ISBN:4338016329
奥田継夫/作  梶山俊夫/絵
24cmX25cm 32p
[キガイ 判] NDC分類:E
販売価:\1,365(税込))

こぶしプロダクション  1985.04.04
映画 ボクちゃんの戦場
106分 カラー ワイド
製作/神山征二郎 大澤豊 俊藤俊夫  監督/大澤豊
出演/前田吟 藤田弓子 山本ゆか里 車木貴典

 潮見 典子  1996.

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