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「まっ黒なおべんとう」

 8月6日広島、8月9日長崎、被爆50年を迎えました。(本稿の執筆は1995年)今なお被爆の苦しみ、悲しみを背負って生きている方々が大勢いることと思います。

「話しとうないです。思い出しますけえ」と、語ることを拒んでいた折免シゲ子さんには、弁当箱に秘められた悲しいお話がありました。教師をしていた児玉辰春さんは、中学生が文化祭で演じた「原爆としげる」の劇をみて深く感動し、退職後、折免さんを何度も訪ねました。

 そうして本になったのが「まっ黒なおべんとう」児玉辰春作・北島新平絵(新日本出版社1989年発行)です。

 しげるは、8月6日の朝、お母さんの作った大豆と麦と米のおべんとうを持って建物疎開の仕事に出かけました。そしてあの閃光を浴びたのです。

 しげるを探して探して探し回るお母さん。たくさんの白骨の中にしげるの白骨を見つけます。胸の骨の下に、まっ黒になったおべんとうが…。年老いて戦場へ行った父と中学三年生で海軍兵学校に行った兄に代わって母と妹を守ってあげよう、父のあとを継いで医者になろうと一生懸命生きていた中学一年生のしげる。そのしげるが原爆の犠牲になったのです。

 実在の"まっ黒なおべんとう"は広島の原爆資料館に展示されています。

 昨年、アメリカのスミソニアン宇宙航空博物館から、展示したいという申込みがあり、折免さんの了解を得て展示されました。新聞にも紹介されていましたね。それを機に今年、児玉さんはアメリカヘも原爆の悲惨さを知らせようとの強い思いから、このお話を絵本にしました。絵本「まっ黒なおべんとう」児玉辰春作・長澤靖絵(新日本出版社)です。

 "まっ黒なおべんとう"が今も続く核実験に激しい怒りをこめて存在していることを全世界の人々に知らせたい。これが折免さんの、児玉さんのこの本にこめられた願いなのです。

新日本出版社
まっ黒なおべんとう
新日本にじの文学
児玉辰春/作 長澤靖/絵
発行 : 1989年 08 月出版
判型:A5判変型上製(タテ20.7×ヨコ15.5) / 115 ページ
ISBN : 4-406-01757-7
NDC:NDC913
定価 1,365円 (本体 1,300円)

新日本出版社
絵本 まっ黒なおべんとう
児玉辰春/作 長澤靖/絵
発行 : 1995年 04 月出版
判型:A4判上製 / 32 ページ
ISBN : 4-406-02345-3
NDC:NDC913
定価 1,575円 (本体 1,500円)

大阪教映社
まっ黒なおべんとう(長編アニメーション映画 1990年作品)
監督 出崎 哲
脚本 今泉 俊昭
原作 小出 隆司
所要時間 カラー49分

 潮見 典子  1995.8.

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