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ベトナムに心を寄せて(1)

 冬の街を歩くと、花屋さんの店先で赤やピンクのシクラメンを目にします。冬の冷たさの中できりりとした花びらの色の明るさは、眺める者の心を和ましてくれます。

 この花を見るたびに思い浮かんでくるのが、岩崎ちひろの「戦火のなかの子どもたち」(岩崎書店)の赤いシクラメンの花です。

 「赤いシクラメンの花は きょねんもおととしも そのまえのとしも 冬のわたしのしごとばの紅一点 ひとつひとつ いつとはなしにひらいては しごとちゅうのわたしとひとみをかわす」

 岩崎ちひろは、赤いシクラメンの花びらのなかに、べトナム戦争で死んでいった子どもたちのひとみをみています。そして第二次世界大戦で死んでいった日本の子どもたちをダブらせています。

 あどけない子どもをやわらかくほのぼのとしたタッチと色彩で描いてきたちひろが、どうしても描かなければならないと考えていた晩年の作品です。

 シクラメンの紅色だけが鮮やかに、それとは対照的に戦火の中の子どもたちはモノクロで描かれています。

 何かを訴えている子どもたちのひとみと平和の中で鮮やかに咲き誇るシクラメンの花の美しさを、戦争を知らない子どもたちは、どのように受け止めるでしょうか。

岩崎書店
 大型創作絵本『戦火のなかの子どもたち』
 岩崎ちひろ/作・絵
 ISBN 4-265-90914-0
 判型 29×25
 32頁
 1973年
 定価1,470円(本体1,400円+税)

ちひろ美術館

 潮見 典子  1995.2.10

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